長い歴史の中で培ってきた工芸品や産業は、守っていきたい日本伝統的文化です。
しかし、個人がその文化を守り、若手後継者の創出や育成していくことは、現代社会では難しいこととなるでしょう。
経済産業省では、そのような伝統工芸品産業を支援するために「伝統的工芸品産業支援補助金」を設けました。
対象となれば、支援が受けることができ、伝統工芸品産業を守ることにつながっていきます。
こちらの記事では、「伝統的工芸品産業支援補助金」について、詳しく解説しています。
後継者の育成や技術・技法の保存などに残していきたいと感じている方は、ぜひご覧になってみてください。
INDEX
伝統的工芸品産業支援補助金の概要
伝統的工芸品産業支援補助金は、経済産業省が実施している「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づいて行っている助成事業です。
経済産業大臣が指定した工芸品が対象となり、伝達法の規定にそって3~5年の事業計画を策定しますが、前もって経済産業大臣の認定を受ける必要がありますので、お気をつけください。
各産地において、伝統的工芸品の原材料確保対策事業、若手後継者の創出育成事業、観光業など、異分野や他産地との連携事業、国内外の大消費地等での需要開拓などに対して支援を行っています。
伝統的工芸品産業支援補助金は、公募期間内に各経済産業局まで必要書類を郵送、メール、電子申請システム「Jグランツ」のいずれかの方法で提出し申請を行います。
なお、問い合わせ先は、製造産業局 生活製品課 伝統的工芸品産業室となっています。
電話:03-3501-3544
FAX:03-3501-0316
事業目的
伝統的工芸品産業支援補助金は、下記を目的として行っている助成事業となります。
『「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」の規定に基づき経済産業大臣が指定した工芸品の組合、団体及び事業者等が実施する事業の一部を国が補助することにより、伝統的工芸品産業の振興を図ること』
成果目的
伝統的工芸品産業支援補助金の成果目的は下記の通りとなります。
・伝統的工芸品の生産額の増減率が、一般生活関連用品(工業統計)の増減率を下回らないこと
伝統的工芸品産業支援補助金の補助対象事業
伝統的工芸品産業支援補助金の補助対象となる事業は、伝産法に基づき大臣認定を受けた3~5年の各種事業計画に沿って実施される、次にあげる5つの事業が対象となります。
①振興計画(伝産法第4条)に基づく事業
・後継者育成事業
イ:後継者・従事者育成事業
ロ:若年層等後継者創出育成事業
・技術・技法の記録収集・保存事業
・原材料確保対策事業
・需要開拓事業
・意匠開発事業
②共同振興計画(伝産法第7条)に基づく事業
・需要開拓等共同展開事業
・新商品共同開発事業
③活性化計画(伝産法第9条)に基づく事業
・活性化事業
④連携活性化計画(伝産法第11条)に基づく事業
・連携活性化事業
⑤支援計画(伝産法第13条)に基づく事業
・人材育成・交流支援事業
・産地プロデューサー事業
伝統的工芸品産業支援補助金の補助対象者
伝統的工芸品産業支援補助金の事業対象となるものは下記の通りとなります。
事業によって、対象者が異なりますのでよく確認しておいてください。
①振興計画(伝産法第4条)に基づく事業
・特定製造協同組合等
②共同振興計画(伝産法第7条)に基づく事業
・特定製造協同組合等及び販売事業者・販売協同組合等
③活性化計画(伝産法第9条)に基づく事業
・製造事業者又はそのグループ及び製造協同組合等
④連携活性化計画(伝産法第11条)に基づく事業
・製造事業者又はそのグループ及び製造協同組合等であって、他の伝統的工芸品の製造事業者や他の業種の事業者等と共同して事業を行う者
⑤支援計画(伝産法第13条)に基づく事業
・伝統的工芸品産業の支援事業を実施しようとする事業者・団体等
伝統的工芸品産業支援補助金の支援内容
伝統的工芸品産業支援補助金の補助金額は下記事業について、上限2,000万円での補助が行われます。
各事業ごとの補助率は下記の通りとなりますので、ご確認ください。
①振興計画(伝産法第4条)に基づく事業
・ 後継者育成事業 補助率:1/2、2/3以内
・技術、技法の記録収集・保存事業 補助率:2/3以内
・原材料確保対策事業 補助率:2/3以内
・需要開拓事業 補助率:2/3以内
・意匠開発事業 補助率:2/3以内
②共同振興計画(伝産法第7条)に基づく事業
・需要開拓等共同展開事業、新商品共同開発事業 補助率:2/3以内
③活性化計画(伝産法第9条)に基づく事業
・活性化事業 補助率:2/3以内
④連携活性化計画(伝産法第11条)に基づく事業
・連携活性化事業 補助率:2/3以内
⑤支援計画(伝産法第13条)に基づく事業
・人材育成・交流支援事業、産地プロデューサー事業 補助率:1/2以内
伝統的工芸品産業支援補助金の手続きの流れ
伝統的工芸品産業支援補助金は、申請を行ってからの審査と、補助金を交付が行われてからの審査と、2つの審査を行うことになります。
申請する前に、伝統的工芸品産業支援補助金の手続きの流れを把握しておきましょう。
(各種計画の認定)
①地方公共団体の長を経由して経済産業省に計画の認定申請
↓
②経済産業省において、内容の審査
↓
③経済産業大臣より事業者に対し、計画認定を通知
(補助金の交付)
①各経済産業局長に対し補助金の申請
↓
②経済産業省において、申請内容の審査
↓
③各経済産業局長より採択の結果通知
伝統的工芸品産業支援補助金を申請する前に
伝統的工芸品産業支援補助金は、申請する前の1ヶ月前までに、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号)に基づく振興計画、活性化計画等が提出しなければなりません。
伝統的工芸品産業支援補助金の申請を検討している製造協同組合、製造事業者、支援者などは早めに該当する計画の準備をしておきましょう。
事業イメージ
伝統的工芸品産業支援補助金には、5つの事業がありますが、どのようなものが事業となるのかイメージが掴みにくのではないでしょうか?
次に、伝統的工芸品産業支援補助金の活性化事業と後継者育成事業(若年創等)の事業イメージを紹介していきます。
活性化事業
活性化事業のイメージとしては、国内外の見本市出展などを通して伝統的工芸品産業の活性化を促す事業です。
オリジナリティのある魅力的な商品を開発するとともに、工芸品産業の背景にある文化を国内外の見本市出展を介して発信していきます。
後継者育成事業(若年層等)
後継者育成事業(若年層等)の例としてあげられるのは、手漉き和紙に関する座学や製造技術等の実習指導などの和紙に関心を深めるきっかけを作る事業です。
美術大学の学生を対象に行い、新たな従事者の創出を推し進めていく事業に対して支援を行っていきます。
伝統的工芸品となるもの
伝統的工芸品とそうでないものの分類は難しいかもしれませんが、伝統的工芸品となるものは、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律57号)」に基づいた、下記の5項目をすべて満たした、経済産業大臣の指定を受けたものが伝統的工芸品となります。
①主として日常生活の用に供されるもの
②その製造過程の主要部分が手工業的
③伝統的な技術又は技法により製造されるもの
④伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
⑤一定の地域において、少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
国が指定した伝統的工芸品の種類
国がしていした伝統的工芸品は235品目ありますが、分類される業種についてご紹介いたします。
伝統的工芸品となる業種は、下記の15種類となっています。
◆織物 38品目
小千谷紬、信州紬、西陣織、博多織、近江上布、本場大島紬、読谷山花織、首里織、与那国織、桐生織、結城紬、多摩織など
◆染色品 13品目
東京染小紋、東京手描友禅、加賀友禅、名古屋友禅、名古屋黒紋付染、京鹿の子紋、京友禅、京小紋、京黒紋付染、琉球びんがた、有松・鳴海絞など
◆その他の繊維製品 5品目
加賀繍、伊賀くみひも、京繍、京くみひも、行田足袋
◆陶磁器 32品目
大堀相馬焼、会津本郷焼、笠間焼、益子焼、九谷焼、美濃焼、赤津焼、瀬戸染付焼、萩焼、大谷焼、京焼・清水焼、石見焼、唐津焼など。
◆漆器 23品目
津軽塗、鳴子漆器、会津塗、鎌倉彫、小田原漆器、新潟漆器、木曽漆器、高岡漆器、金沢漆器、飛騨春慶、若狭塗、京漆器、紀州漆器、大内塗、香川漆器など
◆木工品・竹工品 32品目
二風谷イタ、岩谷堂箪笥、仙台箪笥、大館曲げわっぱ、秋田杉桶樽、奥会津編み組細工、春日部箪笥、江戸指物、箱根寄木細工、松本家具、南木曽ろくろ細工、高山茶筌など
◆金工品 16品目
南部鉄器、山形鋳物、千葉工匠具、東京銀器、東京アンチモニー工芸品、信州打刃物、越前田刃物、高岡銅器、堺田刃物、土佐田刃物など
◆仏壇、仏具 17品目
山形仏壇、長岡仏壇、三条仏壇、飯山仏壇、金沢仏壇、七尾仏壇、名古屋仏壇、三河仏壇、彦根仏壇、京仏壇、大阪仏壇、広島仏壇、川辺仏壇など
◆和紙 9品目
内山紙、越中和紙、美濃和紙、越前和紙、因州和紙、石州和紙、阿波和紙、大洲和紙、土佐和紙
◆文具 10品目
雄勝硯、豊橋筆、鈴鹿すみ、播州そろばん、奈良筆、奈良墨、雲州そろばん、熊野筆、川尻筆、赤間硯
◆石工品 4品目
真壁石燈籠、岡崎石工品、京石工芸品、出雲石燈ろう
◆貴石細工 2品目
甲州水晶貴石細工、若狭めのう細工
◆人形、こけし 9品目
宮城伝統こけし、江戸木目込人形、若狭人形、江戸節句人形、駿河雛具、駿河雛人形、京人形、博多人形、江戸押絵
◆その他の工芸品 22品目
房州うちわ、江戸からかみ、江戸切子、江戸木版画、江戸硝子、江戸べっ甲、甲州印伝、岐阜提灯、京扇子、京うちわ、尾張七宝、長崎べっ甲、三線など
◆工芸材料、工芸用具 3品目
庄川挽物木地、金沢箔、伊勢形紙
まとめ
日本の伝統的工芸品の支援となる伝統的工芸品産業支援補助金について、対象となる5つの事業、補助金額、手続きの流れ、伝統的工芸品の種類などをご紹介してきました。
伝統的工芸品は235品目が指定されていますが、そのほとんどが個人事業主や小規模企業によって支えられています。
しかし、近年では、低価格の輸入品などが増えてきたことによって需要が低迷し、伝統的技術や技法の継承が大変厳しくなってきています。
伝統的工芸品産業支援補助金は、それらの伝統的工芸品を守るために設けられている助成金です。
対象となる方は、ぜひ伝統的工芸品産業支援補助金を利用して、技術・技法の伝達や継承にお役立ててください。
なお、補助金には期間が設けられていますので、見逃すことのないように確認し、準備しておくことが大切となっています。