日本の人口の高齢化に伴い、高齢者向けビジネスが盛んに行われています。
そのような中で高齢者福祉事業にチャレンジしたい方も多くおられます。
しかし、福祉業界に参入するのに敷居が高いイメージがあり、事業を開業するのに二の足を踏んでいる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、高齢者向けビジネスの中から、デイサービス(通所介護)事業を開業するために知っておきたい知識と、デイサービス事業所を開業するために必要な資格・方法につ
いて解説します。
後半では高齢者デイサービスの開業でも役立つ介護事業で利用できる補助金・助成金を4つご紹介いたします。
これから高齢者福祉事業に参入を考えている方や高齢者デイサービス事業に興味のある方、デイサービスを利用しようと考えている方もぜひご参考にしてみられてください。
INDEX
デイサービスとは?
デイサービスは通所介護のことで、施設を利用して日中活動を行い、サービス利用者の身体的健康や精神的健康の維持等を目的に、日中活動を通じて認知症予防や、身体機能の身体機能の向上、サービス利用者の社会参加のサポート、更にはサービス利用者の家族の方の介護負担の軽減をも図る高齢者を元気にすることに貢献できるやりがいのある事業です。
デイサービスを開業するには
デイサービスを開業するためにまず必要なものは何でしょう。
開業するための資格・事業資金の準備・専門のスタッフの雇用・利用予定者や家族の方のニーズなどデイサービス事業を開業するにはしっかりとした計画に基づいて調査を行い、
開業しようとする地域の実情にあった事業所にしなければなりません。
開業する前にどのようなことが必要なのか基本的な知識をしっかりと身に着けて置きましょう。
デイサービスの開業に必要な資格
デイサービス事業を行うには、「法人格」があることが必要です。
法人格の種類には、株式会社等の会社、NPO法人や一般社団法人、社会福祉法人、医療法人などがあります。
法人格がなければ、介護事業を始めることができません。
デイサービス事業を行うにあたり必ず法人(会社)を設立する必要があるということを必ず押さえておきましょう。
福祉業界に参入するからと言って、NPO法人や一般社団法人、社会福祉法人でなければならないという訳ではなく、株式会社や合同会社等でも介護事業を行う資格を得ることができます。
ただ、会社設立手続きには費用や時間がかかることも知っておく必要があります。
どの法人(会社)を設立するのかによってメリット・デメリットがあるので、よく確認をしてから法人設立手続きを行いましょう。
場合によっては行政書士や司法書士などの会社設立の専門家の手を借りることも考慮しましょう。
次に実際にデイサービスを開業するまでの流れを見てみましょう。
デイサービス事業を開業するまでの流れ
デイサービス事業を開業するための流れを以下に記載するので参考にしてみてください。
【デイサービス事業開業までの流れ】
①行政窓口で高齢者デイサービス(通所介護)事業を行うための事前相談を行う。
②法人格を取得する。
③事業計画(開業後の収支見込みを含む)、物件の選定、スタッフの確保等の準備。
④高齢者福祉サービス事業者指定申請手続きを行う。
⑤実地調査を受ける。
⑥指定申請受理通知を受ける。
⑦事業の開始。
※必ずしもこの順番ではありません。状況によって申請書の修正や参考資料の追加があったり順番が前後したりしますのでその都度確認が必要です。
事業計画を立てて、行政窓口に相談しましょう。
「デイサービスを開業するまでの流れ」のところで1番に行政窓口に事業を行うための事前相談を行うと記述しましたが、相談に行くまでに行政窓口で、デイサービス事業用の申請書を入手しましょう。
行政のホームページでも申請書を入手できますので、利用しましょう。
記入例も掲載されているので、まずは例を参考に申請書を書いてみましょう。
ポイントとしては、事業資金と開業2年後までの収支の見込み、利用する建物の立地、人員の確保、利用者の需要等をしっかりとまとめることです。
当たり前のことですが、予算がなければ事業自体を行うことが困難になりますし、事業を開始しても採算が取れないのであれば、事業所はつぶれてしまいます。
なので、事業資金と設立後の予算計画を立てておくことが大切です。
施設の立地についてですが、例えば、事業所予定地が土砂災害警戒区域等に入っていると申請自体ができなくなる場合があるので、物件を探す前にハザードマップ等でしっかりと確認をしておきましょう。
行政が指定福祉サービス事業者として指定してよいかどうかを決定するのに、人員配置基準や施設基準という「審査基準」というものがあります。
この基準を満たさなければ、指定福祉サービス事業者として登録できません。
人員配置基準には、管理者、看護師やケアマネージャー、社会福祉士、介護福祉士等の資格
所持者を雇用する必要があるため、人員配置の見込みを立てておきましょう。
その他にも細かい審査基準がありますので、よく確認しておきましょう。
審査基準を押さえて、しっかり準備しておきましょう。ここでも専門的知識が必要になってくる場合があるので、ここでも、行政書士等の専門家が入ることで、スムーズにデイサービス事業を開業することができるでしょう。
デイサービスの開業に必要な資金
デイサービス事業の開業に必要な資金は、一般に500万円~1,000万円の資金が必要になるといわれています。
広告費や人件費等もある程度、視野に入れて予算計画を立てておきましょう。
予算書を作成するときに役に立ちます。
後半で解説しますが、助成金や補助金の活用も資金計画の重要ポイントになります。
デイサービス開業までの期間
法人(会社)設立からデイサービス事業の開業まで、スムーズに手続きを進めたとして3か月~半年程度の時間がかかります。
また、行政との連絡・相談・調整が必要になってきますので、時間に余裕をもって事業所開業までのタイムスケジュールを作成して、進捗状況に応じて必ず見直しをしましょう。
開業してからの注意点
事業所を開業してからも、安心はできません。デイサービスの運営や、スタッフの確保、利用者やその家族の方のニーズに答え続けることができるように知識やノウハウを身につけておきましょう。
事業の人員や施設に変化があった場合はその都度、行政窓口に、体制変更届等の各種届出書を提出する必要がでてきます。確認を怠らないようにしましょう。
また、雇用関係や税制の知識も必要になります。
税理士や、社会保険労務士等の専門家にも相談できるように、心がけておきましょう。
デイサービス事業開業・経営のために役立つ助成金・補助金4つ
行政では介護サービス事業に参入する人や事業主向けに助成金・補助金等の金銭的な支援を行っています。それぞれ要件を満たせば利用できます。
申請を行えば国や地方自治体から、返済の必要のない給付金を支給してもらえる場合があります。ぜひ参考にしてください。
1職場定着支援助成金(介護労働者雇用管理制度助成コース)
介護事業主が介護労働者の職場の定着促進に資する賃金制度の整備を行った場合に「制度設備助成」を賃金制度の適切な運用を経て介護労働者の離職率に関する目標を達成した場合に
「目標達成助成」を支給します。
介護事業主が、介護労働者の職場への定着の促進に資する賃⾦制度の整備(職務、職責、職能、資格、勤続年数等に応じて階層的に定めるものの整備)を ⾏った場合に制度整備助成(50万円)を⽀給します。
賃⾦制度の適切な運⽤を経て、介護労働者の離職率に関する⽬標を達成した場合、計画期間終了1年経過後に目標達成助成(第1回)(57万円(生産性要件を満たした場合は72万円) )を、計画期間終了3年経過後 に目標達成助成(第2回)(85.5万円(生産性要件を満たした場合は108万円) )を支給します。
2職場定着支援助成金(介護福祉機器助成コース)
介護事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するために、新たに介護福祉機器を導入し、 適切な運⽤を⾏うことにより、労働環境の改善がみられた場合に、機器導入助成(介護福祉 機器の導入費用の25%(上限150万円))を、介護福祉機器の適切な運⽤を経て従業員の離 職率の低下が図られた場合に目標達成助成(介護福祉機器の導入費用の20%(生産性要件を 満たした場合は35%)(上限150万円))を支給します。
3中小企業基盤人材確保助成金
創業や異業種への進出に伴い、人材を新たに雇い入れた場合に、人材の人数に応じて支給される助成金で、①と②の両方に該当するものが利用できます。
要件
①次のいずれかに該当する者。
・業務の企画・立案、指導を行う専門的知識や技術を有する者
・部下を指揮・監督する業務に従事する係長相当職以上の者
②年収350万円以上(賞与を除く)の賃金で雇い入れられるもの
簡単に解説すると、専門的知識や技術を持つ人か部下をもつポジション配置に予定される人を年収350万円以上で雇用すればよい、ということです。
受給額 基盤人材1人あたり140万円 最大5名まで(700万円)。
4両立支援等助成金介護離職防止コース
「介護支援プラン」を作成し、プランに基づいて介護休業の円滑な取得・ 職場復帰に取り組んだ、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支 援制度)を導入し、利用者が出た中小企業事業主に支給します。
A介護休業
介護休業 <休業取得時> ・介護休業の取得、職場復帰について「介護支援プラン」により支援する措置を実施する旨を、 就業規則等で明文化・周知すること。
・介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方 についての希望等を確認のうえ、「介護支援プラン」を作成すること。
・「介護支援プラン」に基づき、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に合計14日以上の介護 休業を取得させること。
<職場復帰時> ※休業取得時と同一の対象介護休業取得者であるとともに、休業取得時の要件かつ以下を満たすことが必要です。
・休業取得時にかかる同一の対象労働者に対し、その上司又は人事労務担当者が面談を実施し、 面談結果を記録すること。
・対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も引き続き雇用 保険の被保険者として3ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していること。
B介護両立支援制度(介護のための柔軟な就労形態の制度)
・介護両立支援制度の利用について「介護支援プラン」により支援する措置を実施する旨を、就業規則等で明文化・周知すること。
・介護に直面した労働者との面談を実施し、介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、「介護支援プラン」を作成すること。
・「介護支援プラン」に基づき業務体制の検討を行い、以下のいずれか1つ以上の介護両立支援制度を導入し、対象労働者に利用させ、制度利用終了後も、引き続き雇用保険の被保険者として1ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していること。
A 介護休業 休業取得時 28.5万円<36万円> 職場復帰時 28.5万円<36万円>
B 介護両立支援制度 28.5万円<36万円>
※A・Bとも1事業主1年度5人まで支給
まとめ
デイサービス事業は利用者だけでなく、利用者の家族や、その人たちを取り巻く地域全体の高齢者福祉を盛り上げる、大変魅力のある事業です。
その魅力を最大限にビジネスに活用するためには、福祉従事者としての意識や、高度な専門知識を養わなければいけません。
本記事を読まれている人の中にはデイサービス事業を開業をするのが難しいと感じた人もいたかもしれませんが、行政窓口には、これから介護事業をしたい方向けの窓口もあり、職員の方が親切に手続きの方法を教えてくれます。
また、厚生労働省や地方自治体では介護事業者向けの補助金・助成金を数多く用意して支援体制を整えています。
これからデイサービス事業を始めようと思う方は、どのようなデイサービス事業をしたいか、地域のニーズを調査したり、事業計画書を作ったりするところから始めてみてはいかがでしょうか。