cvc ベンチャー キャピタル

cvc(コーポレートベンチャーキャピタル)の基礎知識と5つの投資事例

ベンチャーキャピタル

起業したばかりのベンチャー企業やスタートアップ企業が資金調達を行う手段として重要なベンチャーキャピタル(VC)ですが、オープンイノベーションが重視される現在では、VCとはまた違ったコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)に注目が集まっています。

近年では大企業がCVCファンドを相次いで設立してしており、日本郵政、ヤフー、三井不動産、KDDIなど様々な分野で活躍する大企業もその一つです。また、三菱自動車、日産自動車、ルノーは「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を2018年1月に設立。最大10億ドルもの投資を今後5年間で行うということを発表し注目を集めています。

CVCとは一体どんなものなのか、実際の投資事例なども交えてご紹介していきます。資金調達を考えているという起業家や経営者の方はぜひこの機会にCVCについて詳しく知ってみてください。

CVCについて

cvc ベンチャー キャピタル

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC/Corporate Venture Capital)とは、投資を本業としていない事業会社が自己資金でファンドを作り、ベンチャー企業に投資すること、そして、その投資を行なう組織のことです。

しかし、投資ファンドがベンチャー企業にただ投資を行うのではベンチャーキャピタル(VC)とそう違いがないように感じますよね。一体CVCとVCにはどんな違いがあるのでしょうか?

CVCとは?VCとの違い

VCはベンチャー企業に投資することによって将来的に得られるキャピタルゲイン、つまり「利益」を得ることを目的としています。投資家や金融機関、事業会社や個人から集めた資金を、将来有望なベンチャー企業やスタートアップ企業に投資します。

VCは投資先企業となるベンチャー企業やスタートアップ企業に将来性があるかどうかを見極め、成長し大きくなった時にIPOやM&Aを行うことで得られるハイリターンを狙っているのです。VCは利益を得ることを1番の目的にしているため、投資先企業を選ぶ基準は将来的に大きなリターンが見込めるかどうかということだけで、事業内容については気にしません。

対してCVCはというと、利益ではなく「自社の成長や拡大」が目的です。そもそも投資を行うのが自社の事業分野とベンチャー企業のシナジーを生み出すのが目的となっているため、投資対象となるのは協力することで自社に新しい利益を生み出すだろうと考えられる企業のみです。

VCは専門の投資会社が運営することが多いですが、CVCの場合は事業会社である大企業、もしくはその子会社が自己資金を使って運営したり、外部のVCに運営を任せたりします。

M&Aのようなリスクがない

ベンチャー企業は競争が激しいだけでなく、今までになかった新しい価値を生み出すことに挑戦するという特性上、投資を行ったとしても想定通りに事業が進まないというリスクを抱えています。

成功した時のリターンこそ大きいものの、ベンチャー企業への投資は不確実性も高く、最初からM&Aによって自社内に取り込むのはハイリスク過ぎるます。しかし、CVCとして複数のベンチャー企業に出資を行えば、リスクを分散させることが出来るのです。

わかりやすく「卵」と「カゴ」で例えてみましょう。1つのカゴにいくものを卵を入れていたら、落とした時に全ての卵が割れてしまいます。しかし、いくつかのカゴに1つずつ卵を入れておけば、どれかのカゴが落ちて卵が割れてしまったとしても、他の卵は傷つかず済むのです。

オープンイノベーションの手段

現在では顧客の要求や多様化・高度化し、自社だけで顧客のニーズに応えるのが難しくなってきています。そこで大企業が目をつけたのがまだ若いベンチャー企業です。

ベンチャー企業は今までになかった独創的なアイディアや新しい技術を持っています。その技術を大企業の製品開発や開発期間の短縮、市場の開拓に利用すれば、大きな成果に繋がると考えたのです。

このような自社だけでなく様々な異業種、異分野が持っている技術、データ、アイディア、知識、ノウハウ、サービスを組み合わせて革新的なビジネスモデルを作り出すことを「オープンイノベーション」と言いますが、CVCはまさにこのオープンイノベーションの一つの手段として現在注目されているのです。

大企業とベンチャーを繋ぐインターフェース

日本では大企業とベンチャー企業の間での情報流通があまり活発に行われていません。大企業は系列企業には気兼ねなくアクセスすることが出来るものの、系列外の企業となるとアクセスする機会も少なく、限定的になってしまうため、自社がベンチャー企業に対して提供することが出来る多くの価値(資金、ブランド力、顧客基盤など)をベンチャー企業にきちんとアピールすることが出来ていないのです。

そこで、ベンチャー企業と大企業が連携するために必要となるのがインターフェースの存在です。CVCは大企業とベンチャー企業を繋げるインターフェースのようなものです。

CVCの2つのパターン

上でも簡単にご説明しましたが、CVCには2つのパターンがあります。

まず1つめが事業会社が自分の子会社としてジェネラルパートナー(GP)を作り、事業会社本体がリミテッドパートナー(LP)として出資するというパターン。

そして2つめがVCなどの第三者をGPに指名し、事業会社本体がLPとして関与するというパターンです。

以下でそれぞれのパターンについてより詳しくご説明していきます。

事業会社が自社子会社を作る場合

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事業会社が自社子会社としてGPを作る場合、自社の価値観を反映させやすいというメリットがあります。

取り込みたい技術や投資したいと考えているベンチャー企業が明確になっている場合にはこの手段が有効ですが、判断や投資先の発掘において広い視野で見ることが出来なくなってしまいやすいというデメリットも存在しています。

更に、投資するベンチャー企業を見つけたり、投資、ファンド管理、売却など必要な一連の作業を自社子会社で行わなければいけないため、社内外から必要な人材を集める必要もあります。

ベンチャーキャピタル等を指名する場合

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ベンチャーキャピタルなど第三者をGPとして指名する場合、これらの持つ知識や情報網などを活用することが出来るため、すぐにシナジーが得られないとしても情報収集を新鮮な視点で行なっていきたいと考えている場合に有効です。

また、自社子会社としてGPを作る場合にはファンド管理のために社内外から人材を集める必要がありましたが、ベンチャーキャピタルなどをGPとして指名する場合にはこれらの周辺業務を委託することが出来、自社は事業に集中出来るというメリットがあります。

CVCのメリット

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では、CVCを行うことにはどのようなメリットがあるでしょうか?CVCは企業によってこのようなメリットがあるのです。

シナジー

自社が行っている事業と関連性のある事業を行っているベンチャー企業に投資すれば、シナジー効果が生まれ自社の事業を成長させたり、発展させることが出来ます。

オープンイノベーション

大企業が持っている資金、人脈、人材、技術とベンチャー企業の独創的なアイディアや革新的な技術を組み合わせることで、今までになかった新しいビジネスモデルが誕生する可能性があります。

コスト削減

新しく挑戦したい事業や、事業発展のために必要な技術があったとしましょう。しかし、必要な技術を自社だけで研究し開発を行うのは時間もコストもかかりすぎます。

そこで、外部のベンチャー企業の技術を活用する訳です。大企業としては欲しかった「技術」を、ベンチャー企業としては事業を成長させるために必要だった「資金」を得ることが出来るのです。

大企業としては新市場への参入リスクを低減しつつコストも削減出来ます。

CVCの5つの投資事例

日本でも多くの大企業がシナジーを期待して出資を行ったり、協業契約を結んでいます。ここからは実際に行われた国内でのCVCの投資事例についてご紹介していきたいと思います。

1:YJキャピタル

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YJキャピタルはdely株式会社に出資を行っています。dely株式会社は国内料理動画トップシェアを誇るkurashiru(クラシル)を運営している会社です。

2:GMO Venture Partners

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GMOグループのCVC部門「GMO Venture Partners」は2015年、ビジネスシーンで広く普及するコミュニケーションツールであるChatWorkに3億円の出資を行ないました。その他にもインターネット事業のスタートアップ企業に対し、積極的な投資をしています。

3:ABCドリームベンチャーズ

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ABCドリームベンチャーズは2015年に朝日放送が設立したCVCです。ABCドリームベンチャーズが出資を行ったのは空き駐車場のシェアリングエコノミーサービスのakippa株式会社で、自社が実施している音楽、文化事業やスポーツなどのイベントの駐車場不足による機会損失を解消する効果が期待されています。

4:KDDI Open Innovation Fund

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KDDI Open Innovation Fundは通信・メディアによるシナジーを狙い、株式会社運動通信社への出資及び協業契約を行ないました。

株式会社運動通信社は「SPORTS BULL」というスポーツインターネットメディアを運営している会社です。

5:Gree Ventures

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Gree Venturesはインターネットやモバイル業界のスタートアップ企業に積極的な投資を行っていることで知られ、実名制グルメサービス「Retty」に2012年に投資を行っています。

まとめ

以上、CVCの基礎知識、投資事例についてご紹介させて頂きました。利益を目的としたVCとは違い、CVCでは自社の事業の成長や拡大に繋がるシナジーを得ることが出来ます。

CVCを活用することは大企業によってもメリットがあることですが、ベンチャー企業にとっても資金を得ることが出来たり、大企業が持っている資産や財産を活用出来るチャンスがあるなどのメリットがあります。

とはいえ、特定の大企業のイメージが付きすぎてしまうなどデメリットも存在しているため、CVCからの出資を受ける際には細かい部分までしっかり考え、決めるようにしましょう。

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