クラウドファンディング

クラウドファンディングとは?全5種類の特徴や仕組みを分かりやすく解説

クラウドファンディング

個人や企業が資金調達する方法として近年特に注目されているのクラウドファンディングです。不特定多数の人がインターネット経由で個人や企業に金銭提供や協力を行なうサービスの事を指し、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語です。日本ではクラファンと略される事も多くあります。

資金調達と言えば一般的には金融機関からの融資、スタートアップや新興企業であればベンチャーキャピタルからの出資、中小企業であればファクタリングなどが有名ですが、クラウドファンディングには拡散性の高さや手軽さといった魅力的な点が沢山あり、個人や企業の新しい資金調達の仕組みとして注目を集めています

一口にクラウドファンディングと言っても全部で5種類に分かれていて、資金や支援者へのリターン(特典)の在り方で大きく形態を変えていきます。クラウドファンディングの事を全く知らないという方の為に、基本情報から仕組み、資金調達の方法までをこの記事では分かりやすく解説していきたいと思います。

クラウドファンディングの基本情報

クラウドファンディング

多くの人から少しずつ寄付や資金を集めて何かのプロジェクトを実行するという行為自体は古くから世界中で行なわれていますので、決してこの発想自体が新しいという訳ではありません。しかしクラウドファンディングは、この発想をインターネット上のプラットフォームという仕組みを介在する事により、全く新しいニーズを生み出す資金調達方法として確立していったのです。

クラウドファンディングは従来であれば難しかった資金調達者と投資家をダイレクトに結びつける事が可能になった仕組みであり、ITを活用した資金調達の新しい選択肢の一つになっています。こちらの項目では、クラウドファンディングとは一体何でどのような歴史があるのか。簡単な仕組みから基本的な情報をまとめて紹介していきたいと思います。

仕組み

欧米では一般的な資金調達方法として日本より前に認知されていました。日本では2011年に国内最大規模を誇るクラウドファンディング会社「Readyfor」がサービス提供を開始したのが始まりで、東日本大震災の年にスタートしたという事もあり、当初は社会貢献性の高い事業に対して賛同を募るプロジェクトが多くを占めていました。現在では中小企業が市場開拓や新規事業開設を目的とした資金調達に利用する事が増えてきていて、賛同者から資金を集めてスモールスタートを切る事が出来て成功を収めるパターンが増えてきています。

クラウドファンディングの仕組みを簡単に説明するとこうなります。

目的の為に資金調達したいと考えた起案者がその目的をクラウドファンディングのサイト上で公開し、共感した支援者が資金を提供しリターン(特典)を得る。

企業や個人が「こんな事をやりたいから○○円集めています。提供してくれたら○○をリターンします」とサイト上で公開します。魅力的な目的であったり、リターンが素晴らしいものであった場合はユーザーから資金を集める事が出来るという訳です。

支援者に対するリターンの在り方で種類が分かれていきます。金銭的リターンの場合もありますし、モノやサービスでリターンを行なう場合もあります。その点に関しては以下で詳しく説明していきますが、まずはクラウドファンディングのサービスのザックリとした仕組みを理解しておきましょう。

市場規模

クラウドファンディングの市場規模は年々拡大傾向にあります。2013年から2017年のい間で約10倍に増加しており、2019年に世界の市場は6兆9千億円に到達すると言われています。取引額の成長率は年間17%増なので、このまま順調に拡大していけば2022年までに総額11兆円を超える市場規模になると言われています

2017年度の国内クラウドファンディング市場規模は約1700億円です。購入型や寄付型(後で詳しく紹介します)が広く知られているいるのですが市場規模で言うと融資型が大半を占めており、今後は地方自治体の参加や運輸業や製造業などの新規参入、金融機関などとの事業連携などで更に市場規模は拡大されていくと言われています。

利用方法

目的があるから資金調達を受けたいと考える起案者と、金銭的援助を行なってリターンを得たいと考えている支援者。クラウドファンディング利用までの流れはどのサイトでも大体同じなので、以下で簡単な利用方法を紹介していきたいと思います。

まずは資金調達を行ないたい起案者の基本的な流れです。

起案者

1.掲載したいクラウドファンディングを決定して入力フォームから達成したい目的や目標金額、リターンなどを入力する。

2.サイト運営担当者と相談しながらプロジェクトページを作成していく。

3.公開して資金調達を開始した後は様々なPRを行いページを拡散していく。

4.集まったお金でプロジェクトスタート。支援者にリターンを行なう。

続いては資金提供を行いリターンを得たいと考えている支援者の流れです。

支援者

1.クラウドファンディングサイトで様々なプロジェクトを閲覧し、目的の内容やリターンの詳細を確認していく。

2.募集期間中にクラウドファンディングサイト内で支援を行う。

3.募集期間が終了してからは活動報告やプロジェクトの進捗状況を随時確認する。

4.起案者からのリターンを得る。

細かい部分はクラウドファンディングサイトにより多少の変動はあるかもしれませんが、基本的な流れは以上のような形になります。

2種類の決済方法

実はクラウドファンディングの決済には「All or Nothing方式」と「All in方式」という2種類の決済方法が存在しています。それぞれの特徴は以下のようになります。

All or Nothing方式(達成後支援型)

目標金額を達成した時のみ支援金を受け取る事が出来ます。期間内に目標金額に届かなかった場合は、それまでに幾ら支援金が集まっていても1円も受け取る事ができず、支援者の方に返金されるという決済方法です。

「最低○○円集まったらこれが出来る」と明確に必要な資金が固まっているプロジェクトに有効であり、目的に賛同する支援者が多ければ目標額を達成しやすくなります。

All in方式(即時支援型)

例え募集期間内に目標金額に達成しなくても、終了日までに調達した資金を得る事が出来る決済方法です。しかし目標金額に全く届かなくても支援を受けるので支援者へ必ずリターンを届けなくてはいけません。目標に達成しなくても達成可能なプロジェクトである場合や、少しの資金でもあった方がいい場合などは有効です。

プロジェクトを開始する為に必要な資金が始めから明確に決まっているかどうかで、どちらの決済方法を選択するのが有効かを最初に決める事が可能です。自身が行なうプロジェクト特徴や必要資金などを考えて決定するようにしましょう。

クラウドファンディング全5種類の特徴と仕組み

一口にクラウドファンディングと言っても、リターンの在り方の違いで大きく5種類に分別されます。それぞれで特徴は大きく変わり、起案者の目的や支援者のリターンに対する考え方も大きく異なります。

  1. 寄付型
  2. 購入型
  3. 融資型
  4. ファンド投資型
  5. 株式投資型

それぞれの特徴や仕組み、どのようなリターンを得る事ができ起案者はなぜ資金調達を行なおうと考えているのかなどを以下で一つずつ分かりやすく紹介していきたいと思います。

寄付型クラウドファンディングの特徴とリターン

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簡単に説明するとリアルで行なっている募金活動をインターネット上で行なうようにした仕組みです。特徴的なのは、被災地や発展途上国への募金といった曖昧で大きなものではなく、個別で具体的なプロジェクトに対する募金が寄付型クラウドファンディングでは行なう事が出来ます。

集まった資金は全額寄付なので基本的には支援者に対するリターンはない

商品やサービスなどのリターンは基本的にはありませんが、プロジェクト参加のお礼として手紙や写真を受け取る事は多いです。起案者も支援者も共に純粋な社会貢献を目的としている傾向が強く、環境保全や被災地支援、病気の子供の手術費と言った共感性の高いプロジェクトが多いのが特徴です。

通常の募金と異なる点はネット上で手軽に寄付を行う事が出来るという点と、寄付金を使用した活動内容を報告書やサイトなどで知る事が出来る為に、お金の流れを明確に把握できるという点があります。困っている人を助けているという充実感と達成感を味わう事が出来るのが大きな魅力と言えるでしょう。

購入型クラウドファンディングの特徴とリターン

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日本で最も注目されていると言っても過言ではないのが購入型クラウドファンディングです。個人や企業が目的としているプロジェクトやイベントを応援したい、賛同したという支援者が出資を行い、支援者は出資金額に応じたリターンを得る事が出来ます。

出資金額に応じた特別なモノやサービスのリターンを得る事が出来る

参入障壁が低いという事もあり国内だけでも100以上の購入型クラウドファンディングサイトがあると言われています。事前予約型のECサイトに近いイメージを持つと分かりやすいかもしれません。賛同したプロジェクトやイベントでしか手に入らないモノやサービスを先行割引で購入するというイメージです。

市場に出回っていないモノやサービスや権利といった金銭以外の特典がリターンに設定されているのが購入型クラウドファンディングの特徴です。例えば「大好きな女優さんが主演する映画に出資する事でエキストラとして出演してエンドロールに名前が掲載される」と言った形で、通常であれば体験できないような貴重なモノや経験をリターンで得る事が出来ます。

購入型クラウドファンディングは日本国内で最も参加する企業が多いので、その中から支援者の出資したいと考える魅力的な目的やリターンを提供するのは非常に大変です。いかに支援者の心に響くような特別なリターンを提供できるかが資金調達の鍵であると言えるでしょう。

融資型クラウドファンディングの特徴とリターン

クラウドファンディングサイト上で集めた資金を、お金を借りたい企業や個人へ事業者が融資を行なうというのが融資型クラウドファンディングです。

元本+金利をリターンで得る事が出来る

上記で紹介した2つのクラウドファンディングとは違い、融資型ではリターンで金銭を得る事が出来るという特徴があります。不動産や再生可能エネルギー、海外案件に特化しているサイトであったりと、それぞれのクラウドファンディングサイトで扱っている案件が違う時がありますので、事業者は自社に合っているサイトを選び、出資者は興味がある案件へ融資を行なうのが良いでしょう。

出資者が得られるリターンは元本と金利です。返済される方式については投資前に必ずチェックしておく必要がありますが、○年後に金利を含めて元本と共にまとめて返済される場合もあれば、毎月分配金が入ってくるケースもあります。投資前に必ず返済方法に関しては調べておく必要があります。

ファンド投資型クラウドファンディングの特徴とリターン

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融資型と混同される場合が多いファンと投資型クラウドファンディングですが、特徴もリターンも大きな違いがあります。そもそも融資ではなく投資であるという所から違います。

分配金という形で金銭リターンを受け取る事ができ、更に特典として事業で作られたモノやサービスを受け取る事もできる事が多い

融資型では元本+利息という形で利回りが計算されていましたが、ファンド投資型では売り上げに基づく分配金で利回りが計算されていきます。投資した事業が売上計画の目標を達成する事ができれば想定された分配金を受け取る事が出来ますが、反対に売上目標を達成できなければ元本割れに陥る可能性もあります。

融資型よりもリスクは高いものの、思った以上に成果を上げて成功を収めれば想定範囲以上の利回りを得る事も出来る為、リスクは高いがリターンも多く、更に分配金以外の特別なモノやサービスの提供を受けられる事もあるのがファンド投資型クラウドファンディングの特徴です。扱っているサイトは少ないので、色々なプロジェクトを見てから検討してみるのが良いでしょう。

株式投資型クラウドファンディングの特徴とリターン

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株式投資と聞くとハードルが高いように感じますがそんな事は全くありません。東京証券取引所に上々しているような大企業の株を売買するのではなく、株式投資型クラウドファンディングは、未上場企業の株に投資が出来るという仕組みになっています。

リターンは企業の株。将来IPOやM&Aによる買収で大きな金銭リターンを得る事が出来る可能性がある

未上場企業への投資はベンチャーキャピタルやエンジェル投資家になるといった選択肢が今まではありましたが、株式投資型クラウドファンディングが登場した事でネット上で不特定多数の人がスタートアップや新興ベンチャー企業へ投資ができるようになり、従来よりも簡単に企業は資金調達が出来るようになったという訳です。

融資型やファンド投資型のような安定された利回りはありませんがハイリターンを得る事が出来るのが株式投資型の最大の特徴です。未上場企業が上場(IPO)した場合、既に持っている株を初値で売る事で多額の金銭リターンを得る事が出来ますし、それはM&Aで買収された時も同様です。

将来性を高く感じた未上場企業を見つけ、プロジェクトや将来性を応援したいと感じた企業へ投資するというイメージです。従来はベンチャーキャピタルはエンジェル投資家にならなければいけなかった事が、株式投資型クラウドファンディングの登場で、今までよりも気軽に投資が出来るようになったという訳です。

まとめ

初心者の方でも分かりやすいようにクラウドファンディングの仕組みや特徴について解説してきましたが参考になりましたでしょうか。利用前に知っておいて欲しいのはリターンの在り方と種類です。

キングコング西野さんが絵本作成費用をクラウドファンディングで募った事で話題になりましたが、あれは国内で最も盛んに行なわれている購入型クラウドファンディングで、出資金額に応じた特別なモノやサービスを得る事が出来ました。市場規模であれば金額が大きな融資型が大きいのですが、話題になる事が多く企業のマーケティングという意味合いでは購入型で資金調達するのが一般的になりつつあります。

クラウドファンディングで資金調達をしようと考えた場合は、まず上記で紹介した5種類のうちからどれを利用するのがベストなのかを考える必要があります。企業が持っているビジョンや資金調達の目的、魅力的なリターンを提供できるかどうかが鍵になります。

新しい資金調達の形、投資の形として高い注目を集めているクラウドファンディングは海外では既に一般的に浸透していますが日本ではまだまだニッチな分野であるという印象です。しかしこれから更なる市場規模の拡大が予想されていますので、興味がある中小企業の方や個人事業主の方は、新しい資金調達の方法として考えてみてはいかがでしょうか。

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