インターネット上で不特定多数の人から自社が提供するプロジェクトに対して資金を集める事をクラウドファンディングと言います。新しい資金調達の形として近年特に高い注目を集めているものですが、クラウドファンディングで調達した資金にかかる税金はどうなっているのでしょうか?
クラウドファンディングと一口に言っても種類は大きく分けて3つに分けられます。それぞれでかかる税金は異なり、プロジェクトオーナー側だけでなく出資者にも税金がかかるケースもあります。それぞれの特徴やかかる税金の仕組みについて分かりやすく解説していきたいと思います。
INDEX
クラウドファンディングの3つの種類
冒頭でも説明したように、クラウドファンディングと一口に言っても大きく分けて3つの種類に異なるという事をご存知でしたでしょうか。
・購入型
・寄付型
・投資型
大きくこの3つにクラウドファンディングは分類されており、それぞれでかかる税金の仕組みや会計処理方法が異なります。それぞれどのようなクラウドファンディングなのかをまずは説明していきましょう。
購入型とは
クラウドファンディングの中で最も市場規模が大きいのが購入型です。皆さんが思い描いているクラウドファンディングは基本的には購入型であると言っても過言ではありません。仕組みを簡単に説明すると…
購入型クラウドファンディングは、プロジェクトに対して支援者がお金を出資する仕組み。出資を行うとプロジェクトオーナー側はお金ではなく、商品・グッズ・サービスなどでリターンを行う。
募集目標金額が達成した時のみ資金を調達できる「All or Nothing型」と、目標金額に到達しなくてもプロジェクトが成立する「All In型」の2種類がある。
これが購入型の特徴で、CAMPFIREやReadyforなどの大手クラウドファンディングサイトは購入型を中心に行っています。
金銭的リターンはないものの、賛同した企画やプロジェクトの見返りとして、お金では変える事が出来ない特別なサービスや商品などを手に入れる事が出来るというメリットがあります。
寄付型とは
購入型に匹敵する位に多くのユーザーを確保しているのが寄付型クラウドファンディングです。仕組みを簡単に説明すると…
寄付型クラウドファンディングは、プロジェクトに対して支援者がお金を寄付する仕組みの事。購入型とは違い、基本的にはリターンで商品やサービスの提供はない。
プロジェクトによってはお礼の手紙や写真などを貰える事もあるが、基本的には被災地支援など、社会貢献性の強いプロジェクトが多い。
社会貢献性の高いクラウドファンディングなので基本的には見返りは求められません。支援者はピンポイントで困っている人を手助けする事ができ、支援したお金は寄付控除として税金を控除する事ができ節税対策が可能というメリットがあります。
投資型とは
投資型クラウドファンディングというよりはソーシャルレンディングとして日本では高い知名度を誇っています。簡単に仕組みを説明すると…
資産運用を行いたい個人から小口の資金を集め、それを大口化して企業に融資する仕組みの事を指します。支援者は金銭的リターン(利回り)を得る事が出来ます。
投資型の大きな違いは、上記2つとは異なり金銭的リターンが目的であるという点です。いわゆる投資商品の1つですから、当然法規制もあります。
購入型クラウドファンディングの課税ルール
上記で大きくクラウドファンディングの種類について解説していきましたが、ここからはそれぞれで異なる課税ルールについて説明していきたいと思います。まずは日本で現在主流となっている購入型のルールから解説していきます。
起案者にかかる税金
まずは資金調達を行うプロジェクトオーナー側にかかる税金について説明していきます。出資を受ける側が法人の場合は法人税の対象となり、個人の場合は所得税の対象となります。
出資額がリターンの内容に比べて高額であった場合は寄付金の扱いになる場合があり、その時は贈与税の対象となる可能性もありますので注意が必要です。つまり購入型クラウドファンディングで集めた資金やリターンの提供は消費税の対象となる取引になるという訳です。
狩りに購入型クラウドファンディングで集めた資金を人件費のように消費税のかからない費用に充てたとしても課税対象となりますので、使途に関わらず対象となるという点は注意して理解しておく必要があるでしょう。
所得税は年間50万円、贈与税は年間110万円までは非課税となっています。法人の場合は法人税は避けられませんが、個人の場合は出資額の多寡により税金対象外となるケースがありますので、その点は理解しておきましょう。
出資者にかかる税金
購入型クラウドファンディングは基本的には金銭的リターンはありません。企画やプロジェクトに賛同した出資者はお金を支払い、リターンとして商品や特別なサービスを得ます。
つまり、出資者にかかる税金は会計上は通常の売買と同様の扱いになります。お金を支払って商品を購入する、お金を支払ってライブ等を見に行く、金銭的リターンがほとんどない購入型クラウドファンディングの場合は、出資者が気にするべき課税ルールはありません。
寄付型クラウドファンディングの課税ルール
続いては社会貢献性の強い寄付型クラウドファンディングにかかる税金について解説していきます。寄付型の場合は個人と法人で大きく課税ルールが異なります。
個人から個人への寄付
寄付型クラウドファンディングで資金を調達したいと考えている人が個人で、出資者も個人の場合は贈与税がかかります。贈与税の基礎控除額の上限は110万円となりますので、個人から個人への寄付が110万円を越えない場合は贈与税の対象となりません。
個人から法人への寄付
寄付型クラウドファンディングで資金を調達したいと考えている人が法人で、個人から寄付した場合は法人税が適用されます。寄付型の場合はリターンなしで資金を受け取っている為に、受増益が計上され税務上の利益が増える事になりますので、法人が支払う税金は増えます。
法人から個人への寄付
法人が資金調達を行っている個人へ寄付した場合は一時所得とされます。資金調達者である個人には所得税が課せられます。クラウドファンディングの運営業者に支払う手数料などは必要経費として認められますので、この必要経費と一時所得の特別控除である50万円を差し引いた金額に税率をかけた分が所得税額となります。
法人から法人への寄付
資金調達を行っているのが法人で、法人から寄付をした場合は法人税が適用されます。個人から法人への寄付と同様と考えておけば間違いありません。受増益が計上され税務上の利益が増えますので、資金調達を行った法人は支払う税金が増えます。
投資型クラウドファンディングの課税ルール
資産運用を行い金銭的リターンを得る事が可能な投資型クラウドファンディングの課税ルールについて解説していきたいと思います。資金を調達する側と、出資側に分けて説明していきます。
資金調達を行う側の税金
投資型クラウドファンディングを利用して資金を調達した企業は、出資の段階では税金はかかりません。税金がかかってくるのは事業を通じて利益が生じた時点で法人税の対象となります(個人事業主の場合は所得税の対象)。
出資者にかかる税金
投資型クラウドファンディングでは出資者や金銭的リターン(利回り)を得る事が出来ます。しかし投資型クラウドファンディングの場合は、匿名組合を作り、その組合がプロジェクトオーナーに出資を行います。法的にはプロジェクトオーナーと匿名組合員の契約になりますので、営業によって生じた利益や損失などは全てプロジェクトオーナーに帰属します。
つまり、プロジェクトオーナーが匿名組合員に分配する利益は経費とする事が出来る為に、税引き前の利益で分配する事が可能であるという訳です。
企業が利益を出した後に受け取る利子や配当金(分配金)は雑所得として総合課税の対象となります。受け取り分配金からは、通常20.42%の所得税が引かれています。雑所得として計上しなければなりませんので、普通の投資商品と同じように、得た利益が年間20万円を越える場合は申告する必要があります。
クラウドファンディングの税金事情
新たな金融システムのあり方として高い注目を集めているクラウドファンディングですが、それぞれで課税ルールが異なる点や、どのように申告したら良いのか分からないという点により、知らない間に無申告だったなんて事も少なくないのが現状です。
以下で気をつけなければいけない点と、合理的な処理方法を選択する為に必要な点を紹介していきます。
申告漏れを指摘されるケースがある
クラウドファンディングで厄介な点は『全ての人に税金が発生する訳ではない』という点です。控除される金額もありますので、クラウドファンディングで集めた資金の全てに税金が発生する訳ではないというのが一番厄介な点です。
クラウドファンディングを行う前に事前に完璧にかかる税金の事について調べている人は少ないでしょう。FX取引や仮想通貨取引などで大きな利益を手にした人が税務当局から多額の申告漏れを指摘されたというケースは少なくありませんが、クラウドファンディングもネットを通じて大々的に資金調達を行っていますので、申告漏れを指摘されるケースは普通に考えられば多いです。
近年ますます市場規模を拡大しているクラウドファンディングは、税務当局からすれば多くの税収を見込める分野になりますから、今後ますます厳しい目を向けられる可能性があります。しっかりと納税しなければいけないという事は、クラウドファンディングで資金を調達する前に考えておかなければいけないでしょう。
税務署でなく税理士へ依頼するのがベスト
クラウドファンディングのサイト運営者の方に税金の事を聞くと『税金の事は税理士や税務署へ相談してみて下さい』と言われます。当然と言えば当然ですが、サイト運営者は資金を調達した後にかかる税金の事はノータッチです。つまり自分で調査して自分で対応しなければならないという訳です。
クラウドファンディングで調達した資金を最も合理的に処理を行えるのは税理士です。税務署へ相談してみてもはっきりと明確な答えは得られないでしょう。むしろ支払う必要のないお金まで課税対象にされてしまう可能性も否めませんので、合理的でお得な税務処理を行いたいのであれば税理士へ依頼するのが良いと思います。
法人であれば専門で雇っている方がいるかと思いますし、個人事業主の方でもまとめて依頼すれば確定申告も楽に行えると思います。最も合理的かつ手軽に行いたいのであれば、税理士への依頼がベストです。
まとめ
クラウドファンディングで集めた資金の課税ルールや税金の仕組みについて解説してきました。新たなプロジェクトを始動する時や、会社自体が融資などが下りない赤字経営でも調達できる新たな資金調達の方法として注目されているクラウドファンディングですが、課税ルールを知っていないと税金の支払い時に必ず困り、法人の場合は経営を圧迫する要因にもなりかねません。
購入型、寄付型、投資型で税金の仕組みや課税ルールが異なりますので、しっかりと覚えておきましょう。個人でも法人でも税理士の方に依頼してベストな会計処理を行うのが良いのですが、クラウドファンディングを利用する前に起案者の方も、ある程度は税金の仕組みを理解しておく方が良いですよ!