新型コロナウイルス感染症の影響が広がっていくなかで、創業を予定している方や創業して間もない方は、多くの不安を感じているのではないでしょうか?
日本政策金融公庫では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を実施し、業況の悪化している企業に対して支援を行っていますが、誰もが受けられる融資ではなく、創業したての方が利用するには厳しい制度となっています。
そこで、こちらの記事では、創業する方が「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が受けられるか?についてと、創業時に利用できる「新創業融資制度」をご紹介していきます。
創業を予定している方や創業してまだ間もない方にとって、役立つ記事となっていますので、ぜひご覧ください。
新型コロナウイルス感染症特別貸付が利用できる方とは?
日本政策金融公庫では、国民生活事業と中小企業事業の双方で、新型コロナウイルス感染症特別貸付を実施しています。
どちらの事業の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用すればいいのか?と悩む方も多いと思いますが、その違いは下記の通りとなっています。
◆国民生活事業
『新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来しているみなさまを対象とした「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を取り扱っております。』
◆中小企業事業
『新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に、売上の減少など業況悪化をきたしているが、中長期的には、その業況が回復し、かつ、発展することが見込まれる中小企業者を支援します』
次に、国民生活事業と中小企業事業の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用できる方について、みていきましょう。
国民生活事業を利用できる方
国民生活事業の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用できる方は、下記の通りとなっています。
◆新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、下記の①または②のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方
①最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方
②業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
・過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
・令和元年12月の売上高
・令和元年10月から12月の平均売上高
中小企業事業を利用できる方
中小企業事業の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用できる方は、下記の通りとなっています。
◆新型コロナウイルス感染症の影響を受け、下記のいずれにも当てはまる方
①最近1ヵ月間等の売上高、または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む。)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していること、またはこれと同様の状況にあること
②中長期的にみて、業況が回復し、かつ、発展することが見込まれること
創業時はNG!新型コロナウイルス感染症特別貸付
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用できる方は、過去の売上との比較することが前提となっているために、創業時での融資を受けることは厳しいと言えます。
ただし、国民生活事業ならば「②業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等」と記してあるので、業歴が3ヶ月以上あれば融資が受けることが可能となりますが、創業後3ヶ月未満の方は利用できせん。
◆利用して間もない方について(国民生活事業)(中小企業事業)
『創業後3ヵ月未満の方は、新型コロナウイルス感染症特別貸付のご融資はご利用いただけません。』
創業時に利用できる新創業融資制度の紹介
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、創業後3ヶ月未満の方は利用できませんが、国民生活事業の「新創業融資制度」ならば、事業を始める方や事業を開始して間もない方が利用できる融資となります。
新創業融資制度が利用できる方を始めとして、制度の内容を詳しくみてみましょう。
利用できる方
新創業融資制度が利用できる方は、下記の「創業の要件」「雇用創出の要件」「自己資金要件」のすべてに該当する方となります。
①創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
②雇用創出等の要件
「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始め方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)
・なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
③自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方
・ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとなります
新創業融資制度の概要
新創業融資制度の資金の使い道、資金限度額、返済期間、利率(年)、担保・保証人は、下記の表の通りとなります。
資金使途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
返済期間 | 各種融資制度で定めるご返済期間以内 |
利率(年) | 金利情報|国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫 |
担保・保証人 | 原則不要
原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ぶことはありません。 |
新創業融資制度の5つのメリット
日本政策金融公庫が実施している新創業融資制度は、政府が管理している創業支援のための制度です。
創業時には民間の金融機関での審査が通りにくいために、審査が通りやすい新創業融資制度を多くの創業者が利用しています。
新創業融資制度には、審査が通りやすいことを始めとして、担保や保証人、返済期間、信用保証料が不要などの利用する方にとって有利なメリットを受けることができます。
次に、新創業融資制度で受けられる5つのメリットについて、詳しく見てみましょう。
メリット1:返済期間の2年間据置が可能となる
融資を受けたのなら、毎月返済していくことは当然ですが、新創業融資制度では利息のみの返済を2年間行えることができます。
事業を始めて間もない方、資金繰りが不安な方にとっては融資の返済による負担が軽減できることが大きなメリットとなるでしょう。
措置期間を設けて、元本の返済することなく利息分を返済する新創業融資制度は、創業時に余裕が生まれる資金調達法です。
メリット2:担保や保証人の必要がない
融資を受ける時には、担保や保証人が必要となりますが、初めて創業される方には担保や保証人を準備することは厳しいのではないでしょうか?
民間の金融機関で創業融資を受ける場合には、信用保証協会に保証人となってももらい、保証料を支払うことになってしまいます。
新創業融資制度ならば、原則、担保と保証人は不要となっていますので、担保や保証人で悩んでいる方に向いている資金調達です。
また、法人が希望すれば、代表者が連帯保証人となることが可能となり、その場合には利率が0.1%低減されることができるのもメリットの一つとなるでしょう。
メリット3:個人事業主でも利用できる
新創業融資制度は、日本政策金融公庫が個人事業主や中小企業の支援を目的として行っている、政府が運営する金融機関です。
法人だけではなく、個人事業主の方にも幅広く利用することができます。
個人事業主にとって、民間の金融機関からの融資の利用は困難となりますが、新創業融資制度なら融資を受けることが可能となります。
メリット4:1ヶ月程度で受けられる融資
すぐに融資を受けたくても、地方自治体の融資制度では、2ヶ月程度の時間がかかります。
新創業融資制度では、申し込みから融資を受ける期間は1カ月程度となっていますので、比較的早い日数で、資金を手に入れることができます。
早く資金を手に入れたい方はもちろんですが、創業時における資金調達が早いほど利益につながり、遅ければ利益が無駄になってしまう事が多いため、早期の資金調達がポイントとなる創業資金には最適な資金調達法と言えるのではないでしょうか?
メリット5:信用保証料がかからない
民間の金融機関から創業融資を受ける時には、信用保証協会に保証人となってもらうために、保証金を支払わなければなりません。
その額は年間にして、2%程度となっていますが、もしも1,000万円を5年間借りたのなら、100万円にもの保証料が必要となってしまいます。
売上を100万円出すことを考えると、創業したての方にとってかなり高額となるのではないでしょうか?
新創業融資制度なら信用保証料が無料となっていますので、その分返済する額を少なくすることにつながります。
まとめ
日本政策金融公庫が実施している、新型コロナウイルス感染症特別貸付と新創業融資制度について、詳しく解説してきました。
コロナ禍の支援策として設けられている、新型コロナウイルス感染症特別貸付は、創業後3カ月未満の方は、利用できない制度となっていますので、間違うことのないようお気をつけください。。
その一方で、新創業融資制度は、創業時に利用できる様々なメリットを得ることができる融資です。
創業時の民間の金融機関での資金調達は、厳しい審査や条件となっておりますので、創業資金や創業して間もない方は、日本政策金融公庫の新創業融資制度を検討してみてはいかがでしょうか。