新型コロナウイルス感染症の拡大によって全国に緊急事態宣言が発令されました。
コロナウイルスのまん延を抑えるために、働き方をテレワークに変更したり休業要請に応じたりする企業も増え、政府ではゴールデンウィーク開けに緊急事態宣言が延長する方向で調整に入ったと言われています。
このように、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が長く続くことで、これからさらに経済的に厳しい状況となっていくことが考えられます。
そこで、今回はこれらの厳しい状況を乗り越えるために納税などの猶予制度を紹介していきます。
新型コロナウイルス感染症拡大で影響を受けた方に向けて、「国税の納税猶予制度」「徴収猶予の特例制度」「申請による換価の猶予」の3つの猶予をそれぞれわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
新型コロナウイルスの影響で1年間の猶予
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、納税が困難な方に対する納税猶予案が公表されています。
また、通常の納税猶予制度を利用する事でも、国税の納付が1年間猶予できるようになりますので、納税が困難な方はこれらの制度を活用してください。
納税できないからと放置しておくことなく、猶予制度をよく理解した上で申請しておきましょう。
納税できないときの処分
もしも税金を納税期間内に支払わずに滞納してしまったらどうなるのでしょうか?
納税せずに放置し続けると、最終的には財産を抑えられて公売や取り立てによって換価され、最終的には税金の滞納分に充当されてしまいます。
これらの手続きは法律にも定められていますので、本人の意思とは関わりなく執行されることになります。
当然ながら、期限以内に支払わなければ延滞金も加算されてます。
このような事にならないためにも、新型コロナ感染症拡大で影響されて納税できないなら、納税の猶予を行ってください。
コロナ対策で利用できる3つの納税猶予
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、資金繰りが苦しくなり税金の支払いに困ったら、税金の支払いを一時的に待ってもらえる猶予制度が利用できます。
ただし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きくなっている現在では、国税の納税猶予制度、徴収猶予の特例制度(案)、申請による換価の猶予の3つの猶予制度が用意されていますので、自身に合った猶予制度を利用するようにしましょう。
◆国税の納税猶予制度(通常の猶予制度)
◆徴収猶予の特例制度(新型コロナウイルス対策)
◆申請による換価の猶予
国税の納税猶予制度(通常の猶予制度)
新型コロナウイルス感染症の影響によって国税の納付が困難となった場合には、税務署に申請することにより、猶予が認められるようになります。
申請は、所轄の税務署の徴収担当にご相談ください。
猶予が認められた場合
申請によって猶予が認められると、下記の猶予が受けられます。
◆ 原則、1年間猶予が認められます。
(状況に応じて更に1年間猶予される場合もあり)
◆猶予期間中の延滞税が軽減されます。
◆ 財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。
要件
猶予制度の要件は、下記の通りとなります。
◆ 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること。
◆納税について誠実な意思を有すると認められること。
◆猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。
◆納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること。
◆担保の提供が明らかに可能な場合を除いて、担保は不要となります。
・納期限は、令和元年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の確定申告は、延長された期限(令和2年4月16日)が納期限となります。
・既に滞納がある場合や滞納となってから6月を超える場合であっても、税務署長の職権による換価の猶予(国税徴収法第 151 条)が受けられる場合もあります。
個別の事情に該当する場合
その他にも、個別の事業が該当するのであれば猶予が認められる場合もあります。
新型コロナウイルス感染症に納税者(家族含め)がり患した場合や下記のような新型コロナウイルス感染症などに関連した場合も、納税の猶予として認められます。
①災害によ財産に相当な損失が生じた場合
・新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
②ご本人又はご家族が病気にかかった場合
納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用
③事業を廃止し、又は休止した場合
・納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付でき
ない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
④事業に著しい損失を受けた場合
・納税者の方が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、国税
を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額
上記のように、個別の事業で猶予が認められます。
徴収猶予の特例制度(新型コロナウイルス対策)
新型コロナウイルスの影響によって納税が困難となった場合、納税を猶予する特例制度(案)が実施される予定です。
ただし、特例制度の実施されるのは、関係法案が国会で成立されることが前提となっています。
対象となる方
特例制度は個人法人などの規模は問わず、下記の条件を満たす方が対象となります。
◆ 新型コロナウイルスの影響により、令和2年 2⽉以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収⼊が前年同期に⽐べて概ね20%以上減少していること。
◆ ⼀時に納税を⾏うことが困難であること。
なお、「⼀時に納税を⾏うことが困難」かどうかの判断は、少なくとも向こう半年間の事業
資⾦を考慮に⼊れるなどして、申請される⽅の状況に配慮しながらの対応となります。
対象となる国税
徴収猶予の特例制度の対象となる国税は、下記の通りとなります。
◆令和2年2⽉1⽇から同3年1⽉31⽇までに納期限が到来する所得税、法⼈税、消費税等ほぼすべての税⽬(印紙で納めるもの等を除く)が対象になります。
◆これらのうち、既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利⽤することができます。
申請手続きなど
徴収猶予の特例制度の申請手続きは下記の通りとなります。
◆関係法令の施⾏から2ヶ月後、⼜は、納期限(申告納付期限が延⻑された場合は延⻑後の期限)のいずれか遅い⽇までに申請が必要となります。
◆申請書(現在準備中)の他に、収⼊や現預⾦の状況が分かる資料を提出し、提出が難しい場合には⼝頭で確認する予定です。
申請による換価の猶予
国税を一時に納付することにより、事業の継続や生活の維持が困難となる場合がある時に、申請に基づき換価の猶予を受けることができます。
要件
申請による換価の猶予は、下記のすべてに該当すると原則として1年以内の期間に限り、換価の猶予が認められる場合があります。
①県税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
②納税について、誠実な意思を有すると認められること
③換価の猶予を受けようとする県税以外の県税の滞納がないこと
④納付すべき県税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること
⑤原則として、担保の提供があること
なお、上記の「申請による換価の猶予」の他にも、「県税事務所長の職権による換価の猶予」があります。
猶予が認められた場合
申請による換価の猶予が認められた場合、下記の猶予が受けられます。
◆すでに差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。
◆差押により事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予(又は差押えが解除)される場合があります。
◆申請による換価の猶予が認められた期間中の延滞金の一部が免除されます。
申請期限
申請による換価の猶予の申請期限は下記の通りとなります。
◆納期限から6ヶ月以内の申請が必要
提出書類
申請による換価の猶予の申請に必要な提出書類は下記の通りとなります。
◆「換価の猶予申請書」
◆「財産収支状況書」
資産、負債、収支の状況などを記載します。
◆担保の提供に関する書類
担保の提供
申請による換価の猶予は、猶予の申請をする場合は、原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保を提供する必要があります。
地方税法により担保として提供することができる主な財産種類には、下記のようなものがあります。
◆国債や市長が確実と認める上場株式などの有価証券
◆土地、建物
◆市長が確実と認める保証人の保証
ただし、下記のいずれかに該当する場合には、担保は必要となりません。
・猶予を受ける金額が100万円以下である場合
・猶予を受ける期間が3か月以内である場合
・担保を徴することにより、事業継続又は生活維持に著しい支障が生じるなど、特別の事情がある場合
まとめ
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、税金が収めることが困難になった方に向けて、利用できる3つの猶予制度をわかりやすく解説しました。
猶予制度には、通常の猶予制度に加えて、新型コロナウイルス感染症に伴って特例制度の案が設けられています。
関係法案が国会で成立されることが前提となっていますが、早急に特例制度が決まる予定とだと考えれます。
また、条件があえば、新型コロナウイルス感染症によって影響された方々でも、通常の猶予制度が利用できますので早めに申請しておくと安心です。
猶予の申請を行わないで、納税の義務を放置してしまうと延滞金が加算され、最終的には財産さえ抑えられてくる可能性がでてきます。
そうならないように、自身に合った猶予制度を確認し、申請に向けて準備をしておきましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、これからも長く続くと考えられますので、コロナ支援策を上手に活用して、事業や家計の危機を乗り越えてください。