コロナ 持続化給付金 課税対象

持続化給付金の有効活用のために必要な課税対策の3つのポイントを徹底解説

新型コロナウィルス給付金等

持続化給付金の申請にあたり、給付金が課税対象であるかどうかは事業者の関心事でしょう。
例えば、200万円の給付を想定していたにもかかわらず、給付額の一定割合が課税されてしまうと、収支計画を見直さざるを得なくなります。
実際には、持続化給付金自体が課税対象になるのではなく、事業者の収益、費用項目をすべて考慮した「課税所得」が課税対象になります。
給付金の全額を費用計上できるため、事業者の負担をより軽減することができます。

また、給付金に加えて国税庁が打ち出している納税猶予策に申請することで、資金繰りを楽にすることもできます。

課税に対する正しい理解が無いことで、持続化給付金の申請を躊躇したり、受給された給付金を有効活用できなかったりすると事業継続のための機会を失うことになりかねません。
そこで本記事では、最初に持続化給付金を含めたコロナ関連の給付金における課税の取り扱いや国税庁による納税猶予策の概要、持続化給付金の有効活用のために必要な課税対策の3つのポイントを説明します。

事業者においては、給付された持続化給付金をより有効活用できるよう、正しい理解のもと、課税対策を着実に行うようにしましょう。

新型コロナ感染症に関わる主な給付金の課税の取り扱い

新型コロナウィルス感染症にかかわり、様々な給付金が施行されていますが、給付金ごとに課税の取り扱いが分かれています。
そこで、主な給付金における課税の取り扱いを紹介します。

課税対象となる給付金

コロナ 持続化給付金 課税対象

課税対象となる給付金は以下の通りです。

・東京都などの自治体が独自に支給する「感染拡大防止協力金」(休業要請に応じた事業者に現金を支給します)

・国が支給する「雇用調整助成金」(事業主が従業員の雇用維持に努めるために支払う休業手当について、国がその一部を助成します) 

・国が支給する「小学校休業等対応助成金」(小学校の休校などに伴い、子どもの世話をするために休まざるを得ない保護者を支援するため、有給で休ませる事業者に対し助成します)

・国が支給する「小学校休業等対応支援金」(小学校の休校などに伴い、子どもの世話をするために契約した仕事ができなくなった保護者を支援するため、その保護者に助成します)

非課税となる給付金

コロナ 持続化給付金 課税対象

非課税となる給付金は以下の通りです。

①新型コロナ特例法で非課税とされるもの

・国が市町村を通じて支給する「特別定額給付金」(1人あたり10万円を給付します)
・国が市町村を通じて支給する子育て世帯への「臨時特別給付金」(対象児童1人あたり1万円を給付します)

②所得税法で非課税とされるもの(本来は雑所得であり課税対象になりますが、新型コロナの見舞金相当として非課税となります)  

・国が対象者の勤務先や全国保育サービス協会の委託団体を通じて交付する「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券」
・東京都などの自治体が独自に行う「ベビーシッター利用支援事業における助成」

給付金ごとの課税・非課税の根拠について

給付金が課税対象になるかどうかは、所得税法などの規定により定められています。
そこで、給付金が課税対象になるかどうかの根拠を整理しておきましょう。

(1)課税対象となるもの
①事業所得等に区分されるもの
事業収入の減少に対する補償や、支払賃金の補填など、業務上の取引に関連して支給されるもの。

②一時所得に区分されるもの
臨時的に一定の所得水準以下に支給するなど、業務上の取引以外で一時に支給されるもの。

③雑所得に区分されるもの
上記 ①・②以外のもので、法令等により非課税とする規定がないもの。
※非課税となるのは、所得税法などの法律で明確に定められています。

(2)非課税となるもの
①根拠となる法令等の規定により、非課税所得とされるもの
例えば、所得税法の規定により、下記は非課税所得と定められています。
 ・学資として支給される金品(所得税 法9条1項十五号)
 ・心身、又は資産に加えられた損害に対する見舞金(所得税法9条1項十七号)

給付金の課税方法について

これまで見てきたように、給付金は、所得税法などによる明確な定めがない限り、課税対象になります。
ただし、給付金自体に課税されるわけではなく、他の収益や費用項目をすべて合わせた「課税所得」が課税対象になります。
そのため、給付金の活用方法によって税負担を軽減することができます。
以下では、法人を例に給付金にの課税方法を解説します。
個人事業主は法人と勘定科目が異なりますが、考え方は同じです。

(1)収益(益金)項目
 ・売上高
 ・営業外収益
 ・特別利益

(2)費用(損金)項目
 ・売上原価
 ・販売費および一般管理費
 ・営業外費用
 ・特別損失

(3)課税所得 = (1)収益 - (2)費用

(4)法人税(所得税)= 課税所得×法人(所得)税率

給付金は、(1)収益の「特別利益」として計上します。
(2)費用については、給付金の用途によって「売上原価」から「特別損失」までのいずれかに計上されます。
(3)課税所得の計算式の通り、すべての収益、費用項目を含めた「課税所得」が課税対象となり、給付金自体には課税されません。
そのため以下の場合、給付金に対する課税は発生しません。

(a)課税所得全体がマイナス(赤字)になった場合。
(b)受給した給付金の全額を、費用項目として計上した場合。
(b)の場合、課税所得がプラスになれば、課税は発生しますが、給付金の全額を費用計上しているため、助成金自体に課税された場合よりも事業者負担は軽減されています。

新型コロナ感染症に関わる納税猶予策

一方で、新型コロナ感染症の影響でキャッシュフローが枯渇している中小事業主や個人事業主にとっては、納税そのものが負担になります。
そこで、新型コロナウィルス感染症の影響を受けた事業主の負担軽減のため、国税庁への申請により納税猶予が認められています。
国税庁は、事業者の置かれた状況ごとの納税猶予策をFAQの形で紹介しています。
ここでは、そのうち主なものを紹介します。詳細は、国税庁のホームページをご確認ください。
[国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ]

資金繰りが悪化して、期限までに全額を納められない場合

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資金繰りの悪化により国税を納付期限までに納められない方は、税務署に申請を行うことにより、原則として1年間納付が猶予され、延滞税が軽減又は免除されます。
納付猶予は、個人、法人を問わず、原則として全ての税目が対象となります。

収入が大幅に減少した場合

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緊急事態宣言(外出自粛要請)を受けて収入が減少した場合、以下のいずれかの要件も満たせば、令和2年2月1日から令和3年1月 31 日までに納期限が到来する国税の特例猶予を受けられます。
なお、特例猶予の適用を受けたときは、延滞税が免除されます。

①新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等にかかる収入が前年同期に比べ概ね 20%以上減少していること

②一時に納税することが困難であること

特例猶予を受けられない場合も、収入の減少により事業につき著しい損失が生じているときは、従来からある「納税猶予策」を受けられます。
なお、納税猶予を受けたときは、延滞税が軽減されます。

事業損失や売上減少が著しく生じた場合

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事業損失や売上減少が著しく生じたことで国税を一時に納付できないときは、従来からある「納税の猶予」の制度に基づき税務署に申請を行うことにより、最大で1年間の分割納付を受けられます。
なお、特例猶予の適用を受けたときは、延滞税が免除されます。

加えて、事業の著しい損失が発生した場合、一定の条件を満たすことで「納税猶予」を受けることができます。なお、特例猶予の適用を受けたときは、延滞税が免除されます。

個人事業者の事業所得に赤字(損失)が生じた場合の取扱い

令和2年における事業所得に赤字(損失)が生じた個人事業主の税制上の取扱いは、青色申告事業主、白色申告事業主の違いにより、次のとおりの取り扱いとなります。

(1)青色申告事業主
・事業所得に赤字(損失)が生じ、他の所得と通算(損益通算)しても控除しきれない(純損失)場合、その損失額を翌年以後3年間(令和3年から令和5年)にわたって繰り越し、各年分の所得金額から控除することができます(純損失の繰越)。

・純損失が生じた年の前年(令和元年)も青色申告をしている場合、その損失の全部又は一部を前年(令和元年)に繰り戻して、前年分(令和元年分)の所得税の還付(純損失の繰戻し)を受けることができます。また繰り戻さなかった損失は、翌年以後3年間(令和3年から令和5年)にわたって繰り越すことができます。

・純損失の繰戻しの適用を受けるためには、繰戻しを行う純損失が生じた年分(令和2年分)の確定申告書とともに「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を、確定申告期限(延長後の期限)までに所轄の税務署長に提出する必要があります。

(2)白色申告事業主
・事業所得に赤字(損失)が生じ、他の所得と通算(損益通算)しても控除しきれない(純損失)場合、そのうち「事業用資産に生じた災害による損失等」については、翌年以後3年間(令和3年から令和5年)にわたって繰り越し、各年分の所得金額から控除することができます。

・「事業用資産に生じた災害による損失等」とは、棚卸資産や事業用の固定資産などに生じた災害による損失のことです。

持続化給付金を有効活用するための課税対象について

コロナ 持続化給付金 課税対象

これまで、給付金に関わる課税の取り扱いや、国税庁による納税猶予策について説明してきました。
これらをもとに、持続化給付金をより有効に活用するための、課税対策におけるポイントを3つの視点から説明していきます。
まず、持続化給付金は課税対象となり、前述した法人税(所得税)の課税方法がそのまま当てはまります。
経済産業省のホームページには、以下のように解説されています。

『持続化給付金は、極めて厳しい経営環境にある事業者の事業継続を支援するため、使途に制約のない資金を給付するものです。
これは、税務上、益金(個人事業者の場合は、総収入金額)に算入されるものですが、損金(個人事業者の場合は必要経費)の方が多ければ、課税所得は生じず、結果的に課税対象となりません。』

発生する費用の正確な計上

第1のポイントは、発生する費用を正確に計上することです。
営業の自粛により売り上げは減少しますが、人件費や家賃、設備の維持費用などは経常的に発生しています。
また、営業自粛により予定していた新規設備の稼働が中止されると、収益計画を見直さざるを得なくなります。
こうした設備の価値の毀損は、特別損失の対象になります。
計上する費用に漏れがあると、課税所得が増えてしまい、結果的に税負担も増えてしまいます。
発生する費用や損失を着実に計上するようにしましょう。

納税負担軽減策の検討

第2のポイントは、納税負担軽減策の検討です。
前述のように、国税庁では、事業損失や売上減少が著しく生じ納税が困難になった事業者に対する納税負担の軽減策を講じています。
課税所得が大幅に赤字になった場合や、コロナショックからの再生のため将来的に多額の費用が発生する場合など、今期だけでなく来期以降の税負担軽減も検討する必要があります。

分割納付、納税猶予、損失の繰り越しなどを活用し、税負担を少しでも減らすことができるよう、国税庁へ相談するようにしましょう。

意図しない不正計上が無いこと

第3のポイントは、収益や費用の計上において意図しない不正が無いよう細心の注意を行うことです。
持続化給付金の申請においては「宣誓・同意事項」に対する同意が条件になっています。
計上する売上や費用項目に虚偽があると、受給した給付金に対して罰金を加えた返還や、事業者名の公開など重いペナルティが課せられます。
決算処理に不安がある場合、税理士や会計士へ確認するようにしましょう。

まとめ

持続化給付金は課税対象となりますが、給付金自体が課税されるわけではないため、有効活用することで事業者負担をより軽減することができます。
また、国税庁による納税猶予策も打ち出されており、持続化給付金と合わせて活用することで、来期以降の資金繰りも楽にすることができます。
新型コロナ感染症による営業自粛により売り上げが大幅に落ち込みキャッシュが枯渇すると、資産価値が棄損し回復まで時間がかかります。
そのため中長期的な視点での資金計画が必要になります。
事業継続や再生のためには、持続化給付金に加え、納税猶予策など様々な支援策を組み合わせ、少しでも資金繰りを楽にする取り組みが求められます。

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