近年あらゆるサービス業で人手不足になっており、コンビニ等を経営されていて、外国人雇用を検討している方も多いと思います。しかし、外国人雇用に際しては、日本語教育などに時間がかかったりと、人件費等の面での不安もあるかと思います。本記事では、そんな経営者の方の助となる、外国人を含めた雇用に関する助成金について解説します。
①雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、厚生労働省が定める助成金で、従業員の雇用にかかわるものです。
これは、どんな雇用にもあてはまるわけではなく、景気の変動、産業構造の変化やその他の経済上の理由により、事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主が、従業員の一時的な雇用調整(休業・教育訓練・出向)を実施することで、従業員の雇用を維持した場合に支給されるものです。
この助成金の対象は外国人雇用に限った話ではありませんが、現在外国人を雇用する場合に、条件によっては対象となる助成金は、今のところ、この雇用調整助成金のみになります。ぜひ上手に利用して、業績回復に努めましょう。
②支給対象となる一時的な雇用調整とは
企業が事業活動を縮小する時期に、従業員の雇用を維持する方法として、休業・教育訓練・出向があります。
休業
この助成金の対象となる休業とは、労働者がその職場において、所定の労働日に働く意志と能力があるにもかかわらず、働けない状態のことを言います。例えば、赤字の店舗を開店し続けることで、営業利益よりも人件費の方が高くなってしまうために、やむなく休業をする場合などが考えられます。これは、事業主が指定した対象期間内(1年間)に行われるものとします。
教育訓練
この助成金の対象となる教育訓練とは、職業に関する知識・技術・技能等を習得または向上させるもので、所定労働日の所定労働時間内に実地され、かつ教育訓練を受ける労働者が、該当所定労働日の全一日にわたり業務に就かないものを言います。これも、事業主が指定した対象期間内(1年間)に行われるものとします。
例えば経営が困難となっているコンビニで外国人労働者を受け入れた場合、その従業員に日本語講習を受けてもらう場合なども該当します。
なお職業人として共通に必要になるものや、就業規則に基づいて通常行われるもの、法令で義務付けられているもの、転職・再就職・自営のためのものは、この助成金の対象にはなりません。
出向
この助成金の対象となる出向とは、労働者がその職場において、従業員としての地位を保有しつつ、他の事業所において勤務をすることを言います。また、将来出向元事業所に復帰することを前提に、一旦退職して出向先事業所に勤務することも該当します。
例えば経営困難な家族経営のコンビニにおいて、誰か一人が系列のコンビニで働くことで給料を得る場合に、その給料が助成金によって一部負担されます。
③支給対象となる事業主
この助成金を受給するには、以下の①と②を満たし、かつ③に該当しないことが必要です。
①雇用調整の実施
この助成金は、「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」により、やむなく「事業活動を縮小」することになった場合、その事業における雇用を維持するために「労使間の協定」に基づいて「雇用調整(休業・教育訓練・出向)」を実施する事業主が、支給の対象となります。
■「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」とは
景気の変動、産業構造の変化、地域経済の衰退、競合する製品やサービスの出現、消費者物価・外国為替やその他の価格変動による経済事情の変化のことを言います。これをふまえ、以下の理由はこの助成金の対象にはなりません。
・例年繰り返される季節的変動によるもの(自然現象に限らない)。
・事故または災害により、施設や設備が被害を受けたことによるもの。
・法令違反や不法行為、またそれらの疑いによる行政処分や司法処分によって、事業活動の全部または一部の停止を命じられたことによるもの。
■「事業活動の縮小」とは
以下の生産量要件・雇用量要件を満たしていることをいいます。
生産要件:売上高または生産量などの事業活動を示す指標の、最近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。
雇用量要件:雇用保険者被保険者数および、受け入れている派遣労働者の直近3ヶ月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること。
■「労使間の協定」とは
この助成金は、雇用調整(休業・教育訓練・出向)の実施について、労使間で事前に協定し、その決定に沿って雇用調整を実施することを支給要件としています。労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合との間で、組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間で書面により行う必要があります。
②その他の要件
この助成金を受給する事業主は、以下の要件を満たしていることが必要です。
・雇用保険適用事業主である。
・「受給に必要な書類」について、.整備をし、.受給のための手続きとして、労働局等へ提出し、保管をする。また労働局から提出を求められた場合には速やかに提出する。
・労働局等の実施調査を受け入れる。
③不支給要件
この助成金を受給する事業主は、以下のいずれにも該当していないことが必要です。
・過去に雇用関係助成金について、不正受給により不支給決定又は支給決定の取り消しを受け、その日から一定の年月が経過していない。
・過去に労働保険料の滞納がある。
・支給申請日の前日から過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている。
・風俗営業等関係事業主である。
・暴力団関係者である
・倒産している
等
より詳しい情報は厚生労働省のHPから閲覧できます。
雇用調整助成金ガイドブック
④支給の対象となる期間と日数
この助成金は、以下の定められた期間と日数に対して受給できます。
対象期間
この助成金は、1年の期間内に実施した雇用調整(休業・教育訓練・出向)に対して支給されます。休業・教育訓練を行う場合は、その期間を事業主が指定できます。出向は、出向開始日から1年間が対象期間になります。
クーリング期間
1つの対象期間満了後、引き続きこの助成金を受給する場合は、その満了の翌日から1年以上空けないと、新たな対象期間を設定することができません。この設定することができない期間を「クーリング期間」といいます。
判定基礎期間
休業・教育訓練を行う場合、対象期間内の実績を1ヶ月単位で判定し、これに基づいて支給がなされます。この1ヶ月を「判定基礎期間」といいます。
支給対象期間・支給対象期
この助成金は、「対象期間」における一定期間分ごとに雇用調整の計画を決めて、労働局かハローワークへ届出をし、それに基づいて支給申請をします。
・支給対象期間
休業・教育訓練を行う一定期間のこと。1つの判定基礎期間か、連続する2~3つの判定基礎期間どちらかを、事業主が届出ごとに選択できます。
・支給対象期
出向の計画届や支給申請の単位となる期間のこと。出向開始日から最初の6ヶ月間を「第1支給対象期」、次の6ヶ月を「第2支給対象期」と言う。期間の途中で出向が終了する場合は、その終了日までの期間とします。
支給限度日数
この助成金は、1年間で100日分、3年間で150日分が上限となります。
より詳しい情報は厚生労働省のHPから閲覧できます。
雇用調整助成金ガイドブック
⑤受給できる額
この助成金によって受給できる金額は、会社の規模や雇用調整の内容によって変わります。
休業・教育訓練の場合
休業・教育訓練を実施した場合の助成額は、休業を実施した場合の休業手当、または教育訓練を実施した場合の賃金に相当する額に対して、中小企業にはその2/3、大企業にはその1/2が支払われます。(上限額は令和元年8月1日時点で8,335円。)
教育訓練を実施した場合は、更に訓練費として1人1日当たり1,200円(半日の訓練は0.5日として計算)を加算(上限額の計算外)します。
なお、休業・教育訓練の実施期間に、対象労働者が所定外労働等を行っていた場合、その時間相当分を助成額から差し引きます。(「残業相殺」)
出向の場合
出向をした場合の助成額は、出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額(出向前の通常賃金の概ね1/2を上限とする)に対して、中小企業にはその2/3、大企業にはその1/2が支払われます。ただし、1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額の330/365を上限額とします。
より詳しい情報は厚生労働省のHPから閲覧できます。
雇用調整助成金ガイドブック
⑥受給の手続き
この助成金受給の手続きは、以下のような流れになります。
■雇用調整の計画
雇用調整(休業・教育訓練・出向)の具体的な内容を検討し、計画を立てます。
(期間や部署や人数について、対象者をどのように選定するか等)
↓
■計画届
雇用調整の計画の内容について、都道府県労働局またはハローワークへ計画届を提出します。事前に計画届が提出されていない休業等については、この助成金の対象となりません。
↓
■雇用調整の実施
計画通り、雇用調整を実施します。
↓
■支給申請
雇用調整の実施に基づいて、支給申請をします。(支給対象期間ごとに、計画届と申請を行います。)
↓
■労働局における審査・支給決定
支給申請の内容について、労働局で審査と支給決定が行われます。
↓
■支給額の振込
支給決定された額が振り込まれます。
必要な書類など、より詳しい情報は厚生労働省のHPから閲覧できます。
雇用調整助成金ガイドブック
まとめ
以上、コンビニで外国人を雇用した際に利用できる助成金について紹介しました。
人手不足で外国人を雇用されているコンビニ等では、ほかの従業員も含めた休業や教育訓練や出向を行い、助成金が支給されることで、業績改善のチャンスが得られます。ぜひ雇用調整助成金を利用してみてください。