起業時や新規事業を立ち上げる時、また事業の運営や継続をしていくためには、必ずと言っていいほど資金調達が必要となってきます。
資金調達には、銀行融資や資産売却、リースなど様々な種類がありますが、大きく分けると直接金融と間接金融の2つに分けられるのをご存じでしょうか?
直接金融は証券会社からの市場を背景にした資金調達で、間接金融は銀行を介して行われる資金調達です。
今までの企業は銀行からお金を借りる間接金融が一般的でしたが、最近では社債を大量に発行して資金調達をする直接金融も目立ってきました。
そこで、こちらの記事では直接金融と間接金融の解説と同時に、双方のメリットとデメリットを解説していきます。
自身に合った資金調達を考える際にお役立てください。
直接金融と間接金融とは?
事業を行う際には、資金調達は重要な課題の一つとなりますが、資金調達には大きく分類すると直接金融と間接金融の2つに分けることができます。
アメリカでは金融市場全体の約9割が直接金融で成り立っており、日本は間接金融が主流でしたが、最近になって直接金融も増えてきました。
効率よく資金調達をするためには、直接金融と間接金融などの特徴やメリット、デメリットを把握した上で利用することが大切となります。
自身の状況に合う資金調達を見つけるためにも、直接金融と間接金融をよく理解しておきましょう。
株式や債券で行う直接金融
直接金融とは、資金調達を必要とする相手に直接お金を出資する仕組みのことをいいます。
主に株式や債券で行われ、お金を出資する投資家が、値下がりするリスクを承知の上で株式や債券を購入するのです。
つまり、企業が発行する株式や債券を投資家に購入(出資)してもらうことが企業への資金調達となり、もしも企業に利益を得たときには、投資家に配当金としてで利益の一部を還元する方法です。
国債などは、国や自治体が対象となる直接金融と考えてよいでしょう。
なお、投資銀行や証券会社などの金融機関が企業と投資家の仲介することもありますが、直接的に資金が渡ることから直接金融と言われています。
①株式の発行
直接融資としての資金調達には、会社として株式を発行する方法があります。
新株発行することによって、会社の自己資本が多くなることによって、会社の資金も増えることになりますので、債務が多くてもある程度までは耐えられるようなります。
株式を発行しても購入してくれる人を探さなければなりませんが、返済の必要のない資金調達です。
②社債の発行
社債とは、企業が発行する債券のことです。
金融機関から融資を受けずに、自社で出資してくれる人を募る形の資金調達です。
社債を発行するためには信用が必要となり、東証の一部や二部に上場している企業でなければ難しいかもしれません。
社債には、普通社債、新株予約権付社債などがあります。
借入金などの間接金融
間接金融とは、貸し手と借り手との間に金融機関が入って行う借入やローンなどの仕組みを言います。
金融機関等が行っている借入やローンで貸し付けているお金は、もともとは預金者のものとなることから間接金融と呼ばれているのです。
また、間接金融では貸し倒れリスクは、銀行などの金融機関が負うことになっています。
長年にわたって、日本の金融市場ではこのような間接金融が主流となっていましたが、最近になって徐々に間接金融から直接金融への流れに変わってきていることを覚えておきましょう。
①銀行融資
間接金融の銀行融資は、低金利で高額の資金調達が受けることができる可能性があります。
ただし、銀行融資は事業計画書や収支計画書を提出しなければならず、審査が厳しいのが特徴です。
また、最近ではメガバンクは企業融資を縮小しており、地方銀行の融資が主体となってきました。
銀行融資を希望するのなら、取引関係のある地方銀行で資金調達を検討してみると良いかもしれません。
②ノンバンク融資
銀行以外の業者から借り入れるノンバンク融資も間接金融の資金調達となります。
ノンバンクでの融資はビジネスローンと呼ばれており、事業者専門のローンを提供しています。
ノンバンク融資は銀行融資と比較して金利が高いのが特徴となっていますので、長期的な融資には適していませんが、審査の難易度は低めです。
短期間に利用する場合、銀行融資が利用できなかった場合には、ノンバンク融資が考えられます。
直接金融のメリットとデメリット
資金が必要な相手に直接的に資金調達する直接金融には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
貸し手や借り手の立場によっても異なってきますので、直接金融での資金調達を選ぶ前には、その特徴を確認しておくことが大切となるでしょう。
次に、収益性や利回り、リスクの高さなど、いろいろな角度から直接金融の良い点と悪い点を見てみましょう。
直接金融のメリット
直接金融は、株式や債券などの投資商品を介して行われますが、貸し手側と借り手側によってメリットが異なっています。
貸し手側にとっては、利用することで貸出金利を自由に設定することができるために、高リターンとなる可能性があります。
また、株式や債券などの投資商品は配当金は利回りが、銀行預金などの間接金融と比較すると高めになっていまので、もしも、株価上昇したのなら資産価値の増加につなげることができるでしょう。
借り手側のメリットは、公開する情報を制限できることと、リスクが小さく抑えられることがメリットです。
銀行などの間接金融では審査の際に情報開示をする必要がありますが、直接金融では公開する情報を制限することができます。
直接金融には仲介役がいないために、借り手側に貸倒が生じても貸し手側の責任となるために、借り手側のリスクは最小限に抑えられます。
◆貸し手側のメリット
・高リターンとなる可能性がある
・間接金融と比べて利回りが高め
・貸出金利を自由に設定できる
◆借り手のメリット
・情報の公開が制限できる
・貸し手側の責任になるために、リスクが最小限に抑えられる
直接金融のデメリット
直接金融でも、貸し手側と借り手側によって、デメリットは異なってきますので、しっかりと把握しておく必要があります。
貸し手側は、高リターンの可能性が出てくる反面、高いリスクを背負う可能性があります。
直接金融では銀行などの仲介役がいないために、貸倒れが発生した場合には、貸し手側が責任を負う必要があり、元本割れの危険性も伴います。
借り手側のデメリットは、IR活動を行う際に大きな費用が掛かると同時に、株式や債券の魅力を投資家にアピールしなくてはいけないからです。
また、株主への配当が必要になることと、株主が発言権を持ってしまうこともデメリットの一つとして考えられます
◆貸し手側のデメリット
・貸倒れのリスクを負わなければならない
・元本割れの危険性がある
◆借り手側のデメリット
・IR活動に大きな費用がかかる
・株主への配当
・株主が発言権を持つ
間接金融のメリットとデメリット
銀行などが介して行う間接金融では、貸し手側が銀行となるため、資金調達を行う借り手側から見たメリットとデメリットを見ていきます。
ちなみに銀行では、貸倒れリスクを軽減するために、借り手の資産、負債のバランス、決算結果などを細かく審査した上で資金の貸し出しを行っています。
間接金融のメリット
間接金融を利用する借り手側が、貸倒れが起き返済できなくなった時には、その損失は銀行が背負うことになり、預金者の預金は原則的に安全に守られます。
そのため、銀行側は損をしてでも、借り手側の財務面での経営サポートを行ってくれる可能性が高くなります。
また、直接金融を行えば大きく損をする可能性がありますが、間接金融では損をすることはほとんどないでしょう。
◆借り手側のメリット
・銀行がリスクを負ってくれる
・経営サポートを行ってくれる可能性が高まる
・損をすることはない
間接金融のデメリット
間接金融を利用する際のデメリットとしてあげられるのは、自身の銀行に対して情報を提供しなければならないことです。
情報を提供したくないのであれば、直接金融の方が向いていると言えるでしょう。
銀行側は貸倒れリスクを最小限に収めようとするために、有価証券報告書や借り手側の情報を聴取しようとしてきますが、借り手側はこのようなデメリットからは避けることはできません。
また、借り手側は融資を受けたいと希望しても、銀行が設けている審査に通らなければ利用できず、間接金融では利子を支払う必要があります。
◆借り手側のデメリット
・情報を提供する必要がある
・審査を通らないと利用できない
・利子を支払わなければいけない
組み合わせによる資金調達方法
直接金融と間接金融による資金調達を解説してきましたが、資金調達にはそれ以外にも下記のような様々な方法があります。
◆資産売却
・企業が保有している土地、建物、在庫を売却する資産調達方法。
◆リース
・現金の資金調達にはなりませんが、設備投資として機械を利用して行う資金調達です。
◆助成金や補助金
・国や地方団体等で実施している返済する必要のない資金調達法が、利用するためには条件を満たし、審査を通過する必要があります。
このような資金調達法が考えられますが、資金調達の資金に応じてこれらの方法を組み合わせて行うことも検討してみてはいかがでしょうか?
(組み合わせ:例)
例えば、下記の図のように2,000万円必要な企業の場合には、2,000万円全てを一か所で借り入れるのではなく、設備はリースで対応することで500万円を削減します。
1,500万円のうち、1,000万円を新株の発行、残り500万円を銀行にお願いするという組み合わせ方法です。
もしも、助成金や補助金の公募期間や条件を満たしているのなら、返済の必要がない助成金や補助金を利用すれば、さらにスムーズに資金調達が行える可能性がでてきます。
その反対に、全てを融資で賄おうとしたら、多くの利息を支払うことになってしまい、資金繰りや事業の運転資金にも影響を及ぼすことになるでしょう。
このように、上手に資金調達することは、事業の発展や継続の大切な足がかりとなるのです。
まとめ
直接金融と間接金融の解説に加えて、直接融資と間接融資のメリットとデメリット、組み合わせによる資金調達方法を詳しくご紹介してきました。
直接金融と間接金融は、資金調達の方法も異なっていることに加えて、リスクやリターンなどのメリットやデメリットも違っています。
また、資金調達をいくつか組み合わせることで、費用を抑えた賢い資金調達が可能となる場合もあります。
最近になって間接金融から直接金融への流れも多くなってきましたが、利用する前にはその違いをよく把握してから行うことが大切となるでしょう。
事業の発展や継続につなげていくためにも、資金調達の知識を身に身に付けた上で、自社にあった方法を探し出してみてください。