株などの投資を始めると、「投資対象は何にするのか?」「どの銘柄を購入するか?」などが気になるところですが、損をしないためには日本の経済の動きを把握しておく必要があります。
しかし、「景気が良いのか?」「デフレ、インフレなのか?」など、特に投資を始めたばかりだと、経済の動きはわかりにくいのではないでしょうか?
そこで、こちらの記事では、金融機関から市場に流通している「マネーストック」の意味や計算式など、CD預金も入れた「マネーストック」からみえる経済の動きを解説していきます。
景気と深い関係にある「マネーストック」を知って、ご自身の投資に役立ててください。
INDEX
金融機関の通貨総量となる「マネーストック」
「マネーストック」という用語をご存知ですか?
「マネーストック」というのは金融機関から市場(個人、民間企業、一般法人、地方公共団体)に流通している通貨総量のことを指しています。
つまり、個人、民間、一般法人、地方公共団体が保有している通貨の残高であり、世の中に出回っているお金の総量を「マネーストック」と呼んでいるのです。
金融機関から流通している通貨の種類
金融機関から流通している通貨には、様々な種類があります。
例えば、財布に入っている現金通貨はもちろんですが、その他にも預金通貨、定期預金、定期積金など貯蓄している準通貨などのように、いくつもの種類が存在しています。
日本銀行では、このように種類のある通貨を分別し統計を作成し、その結果から通貨を調整するタイミングを見計らっています。
準通貨とは?
「準通貨」とは、通貨自体は支払いの手段としては機能していなくても、すぐに確実に貨幣に変えることができる金融資産のことを言います。
近似貨幣とも呼ばれており、定期性預金、短期債などのように解約した直後に、現金通貨または預金通貨となり支払いの手段として使用できる通貨のことです。
預金通貨に似ている性質を持つことから、「準通貨」と言われています。
CD 譲渡性預金
「マネーストック」を考えるのなら、「CD 譲渡性預金」は知っておきたい用語です。
「CD 譲渡性預金」とは、前提として億単位の預け入れを前提とした金融商品のことをいい、中途解約はできないけれど、預金証書の売買は自由にできる形になっている通貨のことです。
つまり、現金化はできないけれど預金証書を売ることで、現金の代わりになるのです。
例えて言うのなら、2億円の入っている預金口座を、2億円で他の人に譲るというような感じです。
「銀行が発行する超高額紙幣」と言われているように、高額の支払いで貨幣を準備するのは大変ですが、こちらの「CD 譲渡性預金」を利用すれば簡単に譲渡することができます。
「CD 譲渡性預金」は、法人の資金運用に利用される預金です。
日銀が発行したお金はマネタリーベース
「マネタリーベース」は「マネーストック」と似た統計なので間違われやすいですが、「マネタリーベース」とは、日本銀行が供給している通貨の総量を指しています。
「マネーストック」の市場に流通しているお金の総量に対して、「マネタリーベース」は日銀が発行というところがポイントとなります。
日本は日本銀行がお金を発行しているために、日本銀行が発行している=市場に流通している全てのお金と思わないように注意しておきましょう。
マネタリーベースの通貨総量
「マネタリーベース」として集計される通貨には、日本銀行が発行したお札と硬貨と日本銀行の当座預金のみの2点です。
細かく言うと「民間企業と個人の保有する現金」「民間の金融機関が日本銀行に預けた預金残高」ということです。
つまり、形のあるお金の総量を指しています。
「マネーストック」と「マネタリーベース」の違いは、「マネーストック」は実体のないお金も含まれていところ、「マネタリーベース」は実体のあるお金ということになるでしょう。
日本銀行が「マネタリーベース」を増やしたとしたら、民間企業への融資が増えることとなり、「マネーストック」も増加します。
このような状態になると、景気がよくなると言われています。
4つの指標がある「マネーストック」の統計と計算式
「マネーストック」で統計を行う場合には、通貨の範囲によって4つの指標に指標に分けられています。
その4つ指標とは「M1、M2、M3、広義流動性」です。
それぞれがどのような指標になっているのか見ていきましょう。
M1の定義
M1が預金通貨の対象としている金融機関は、預金業務を行っている全ての金融機関です。M1では、現金通貨と預貯金という決済手段として用いることができる通貨で構成されています。
【M1の計算式】
現金通貨+預金通貨(預金通貨の発行者は、全預金取扱機関)
・現金通貨=日本銀行券発行高+貨幣流通高
・預金通貨=要求払預金(当座、普通、貯蓄、通知、別段、納税準備)-調査対象金融機関保有小切手・手形
M2の定義
M2の定義は、M1の定義に、準通貨とCDがプラスされます。
決済手段となる準通貨と、億単位の預け入れを前提とした金融商品を加えることで、M1よりも多くの通貨となっていきます。
【M2の計算式】
現金通貨+預金通貨+準通貨+CD譲渡性預金
M3の定義
M2の通貨範囲と同じとなるM3ですが、違っているのはM2の預金の預け入れ先は限定されるというところです。
M3の定義では限定されていません。
【M3の計算式】
現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CDの発行者は、全預金取扱機関)
広義流動性の定義
広義流動性の定義では、M3に流動性と考えられる金融商品を加えています。
金銭の信託、投資信託、金融債、銀行発行普通社債、金融機関発行CP、国債、外債を加えることで、計算から導き出される通貨はさらに多くなっていきます。
【広義流動性の計算式】
M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債+外債
物価に影響を与える「マネーストック」
「マネーストック」の統計や計算式を見てきましたが、ここで重要となってくるのは導き出した「マネーストック」は、物価に影響を与えると言うことです。
「マネーストック」が増加するということは、世の中に出回っているお金の総量が増えていくことになります。
その結果、社会全体のお金が増えて報酬やお給料も上がっていくこととなるでしょう。
多くのお金を手にすることで、消費が増えていき景気が向上していくのです。
デフレーションとインフレーションとなる理由
しかし、お金をたくさん供給すれば世の中はずっと景気が良いままでいられるのしょうか?お金を供給し続けて量が多すぎてしまうと、お金の価値が下がります。
そうなると、皆がお金を持っているために、物やサービスの値段が上昇してインフレーションとなります。
その反対に、お金の量が減ってしまうとどうなるでしょうか?皆にお金がないために、物やサービスは値段を下げていきます。
そして物価が下が理続けていくと、デフレーションが起きることになってしまうのです。
「マネーストック」の影響
上記のように、デフレーションとインフレーションは、「マネーストック」が増えたり減ったりすることで、起きてしまう可能性が出てきます。
「マネーストック」は、銀行の融資を制御するか、緩和することにって変わってきます。
このように、「マネーストック」は、日本の経済に影響を与える存在となっています。
デフレーションとインフレーションの投資
投資をするにあたって、デフレーションとインフレーションと経済がなった場合に、どうのような影響がでるのでしょうか?デフレーションとインフレーションの場合を比べてみましょう。
デフレーションの場合の投資
物やサービスの価格が下がり、景気が悪くなってくるデフレションになってしまうと、株価の上昇に期待が持てなくなるために、株式投資での利益はあまり望めなくなってしまいます。
デフレーションの場合には、資産を現金で保有することや、債券、金などの安全な資産に人気が集まりだします。
また、安くなった値段で資産を購入することができるので、デフレ‐ションとなった時に購入を検討してみるのも、ひとつのやり方です。
インフレーションの場合の投資
物やサービスの価格が上がっていくインフレ‐ションになった場合には、株や土地などの資産を持っている人は、買ったときよりも価格があがるために利益が得やすい状態になります。
また長期間の住宅ローンを組んでいる人は、給料が上がるために住宅ローンの負担が軽くなるとも言えます。
「マネーストック」が確認できる日銀のホームページ
デフレーションやインフレーションなど、経済を左右させる力を持っている「マネーストック」は、投資をしている方にとって、大事な数値であることがわかりました。
景気の動きを見るのに、「マネーストック」は欠かせない存在だといえるでしょう。
その「マネーストック」は、日経のホームページで確認することができます。
毎月速報が発表されたときには、詳細なデータや「マネーストック」に関した記事も掲載しています。
「マネーストック」を過去の記録と比較したり、現在の経済情勢をチェックして投資に役立ててください。
まとめ
投資をするときの参考となる「マネーストック」について、意味や計算式、見方や与える影響などを解説してみました。
経済がどうなっていくのかを予想するのは難しいですが、「マネーストック」の推移を知ることで、ある程度の景気の動向を図ることができます。
景気が良ければ株価は上がり、悪くなると株価は下がる傾向にあるように、投資はつねに経済の動きと隣り合わせです。
もしも、経済の予測に期待できる「マネーストック」を知っていれば、投資の判断として役立つことは間違いありません。
投資を行う方達にとって「マネーストック」は、力強い指標となるはずです。