
融資を受けるときには、銀行との交渉が欠かせませんが、経営者の方には、銀行との交渉が苦手な方が数多く見受けられます。
「苦手だから」と銀行との交渉を諦めているのなら、ぜひこちらの記事を参考にして交渉してみてください。
もしも、銀行の融資がクリアできれば、資金繰りの改善と同時に「銀行から融資を受けた会社」として信用度がアップするはずです。
こちらの記事では、銀行との交渉を有利に進めていくための5つのチェック項目を詳しく解説しています。
交渉前には、知っておきたいポイントとなっていますので、ぜひご覧になってみてください。
融資の申込みは稟議書(りんぎしょ)から始まる
銀行融資を行った際に、どのような順序で進んでいくのかご存知でしょうか?
銀行の融資を申し込むと、、銀行内では資金使途、条件、融資希望額を基準に審査が行われます。
ここで言う審査とは会議ではなく、稟議書(りんぎしょ)という書類が回覧という形で進められていきます。
融資の申込みを受けた担当者は、稟議書(りんぎしょ)を作成し、銀行の支店内で回覧を行い、最後には支店長の判断で融資を行うか否かを決定します。
稟議書(りんぎしょ)とは? 稟議のための書類のこと。起案書とも言う。 会社などにおいて、比較的重要でない事項について周りからの承認を求めることを目的として作成された書類のこと。
稟議書(りんぎしょ)に記される項目
稟議書(りんぎしょ)の中には、「融資に値するか?」という情報が記載されています。
決まった項目となっているので、事前にどのようなことがチェックするのか、把握しておいてください。
【稟議書に書かれる項目】
☑ 金利や借入の期間、保証人や担保の有無
☑ 資金の使い道
☑ 返済の方法(主な財源について)
☑ 企業の財務内容や業績について
☑ 保証人の必要性と融資に値するかどうか
しかし、このような稟議書は、申し込めば必ず作成するという訳ではありません。
稟議書の作成は手間と時間がかかるために、「担当者が融資に値する」という判断を下さなければ作ってもらえないのです。
融資を受けようと思うのなら、まずは担当者に「稟議書を作成したい」という気持ちを起こさせることです
稟議書(りんぎしょ)で行う銀行の融資審査の流れ
◆ステップ1:担当者によって稟議書(りんぎしょ)が作成される
↓
◆ステップ2:支店内の関係各者によって回覧
↓
◆ステップ3:最後に支店長の元に届けられる
↓
◆ステップ4:稟議書(りんぎしょ)の内容から支店長が融資の是非を判断
↓
◆ステップ5:融資金額、返済期限、利率などの条件が決定される
※ただし、一定額を超えてしまう場合や稟議書(りんぎしょ)の内容によっては、支店長に決裁権限がない場合もあります
このような場合には、支店長から本部の担当部署に稟議書(りんぎしょ)が回されて、本部による決裁が行われることになります。
銀行の融資を受けるチェック項目
稟議書(りんぎしょ)は、銀行で融資を受ける際に大切な書類だということがわかりました。
稟議書(りんぎしょ)をみて、担当者や回覧者が「融資に値する会社」だと思わせることが重要でなのです。
次に、稟議書(りんぎしょ)を含んだ、銀行との交渉について解説していきます。
銀行で融資を受ける際の具体的なポイントとなっていますので、ひとつずつ把握して実行できるようにしておきましょう。
銀行融資の際に重要となる5つのチェック項目
銀行の融資の際に抑えておきたい、大切となる5つの項目を紹介します。
「銀行との交渉が苦手」という方でも、5つの項目を守ることによって、審査が通りやすくなり、融資の可決率も向上します。
【5つのチェック項目】
①借入枠を事前に確認
②融資の目的をきちんと説明できるか?
③事業内容と計画をわかりやすく説明できるか?
④返済能力は返済条件を用いて説得
⑤経営力を示すために数値管理を把握する
続いて、【5つのチェック項目】をひとつずつ詳しく解説していきます。。
借入枠を事前に確認
銀行の融資を検討するのなら、まずは会社の借入枠がどのくらいあるのかを調べておきましょう。
特に、大きな資金が必要となる設備投資を行う場合には、借入枠が充分あるかは大切なこととなります。
借入枠は、会社の規模、取引年数、売上利益によって決まると同時に、返済日までの営業利益などが充分あるかなどもチェックされます。
もしも、営業利益が返済額に達していないのであれば、担保が不十分と見なされて借入枠が少なく設定されることになります。
『【銀行借入枠】 銀行融資枠は、「コミットメントライン」とも呼ばれ、銀行と顧客(企業等)が予め設定した期間・融資枠の範囲内で、顧客の請求に基づき、銀行が融資を実行することを約束(コミット)する契約をいいます。
これは、安定的な経常運転資金枠の確保や、マーケット環境の不測の事態への対応手段確保などを目的に利用され、契約期間中は、顧客は融資枠内であれば、いつでも審査なしで融資を受けることができます。』
出典:銀行融資枠とは|金融経済用語集
融資の目的をきちんと説明できるか?
銀行からの融資を受けた後に、資金を「どのような目的」で「どのような使い方」をするのかきちんと説明できるようにしてください。
具体的には、「運転資金」「設備投資」などの使途を示し、資金繰り表に加えて最新の財務諸表に基づいて説明していきます。
予定している借入の「返済が滞りなく行える」ことと、「借入の目的」を明確にしていくことが大切です。
「設備投資」を目的として借入をする場合は、貸借対照表と損益計算書を用意して、会社の財務状況をよく説明してください。
「運転資金」の目的で借り入れする場合には、返済財源を示すことが大切です。
【設備投資とは?】
設備投資とは、建設、機械設備等の有形固定資産に対して、投資することを意味しています。
設備投資には、「民間投資」と「公共投資」に分けられており、「民間投資」は企業が自己責任において投資するものをいいます。
「公共投資」は、政府や地方公共団体が社会福祉のために投資することです。
【運転資金とは?】
運転資金は、原材料、商品などの仕入から支払いまでの期間のことを指します。
仕入れた原材料、商品を保管し、商品および製品として売上げて代金を入金するまでを補うための資金です。
事業内容と計画をわかりやすく説明できるか?
銀行との交渉にあたっては、事業の内容、今後の事業計画、会社の資料、将来性のアピールが大切です。
成長を見込める会社に対してなら、融資をしてくれる可能性が高まります。
アピールするポイントとしては、話だけではなく、掲載された資料、具体的な数値、詳細な計画が記載されている書類などが、ポイントとなります。
その他には、他の企業との提携、コラボレーション、支援を受ける予定があれば、審査の材料として利用することができます。
返済能力は返済条件を用いて説得
返済できることを示すことで、銀行からの融資を受けられる確率は高まってきます。
返済条件を示すためには、「従来の資金繰り表」はもちろんですが、融資を受けた時の「新規借入金を計上した資金繰り表」の二通りの資金繰り表を作成しておくことがポイントとなります。
そして、決算期までをどのような返済計画を立てるのかを、資料を見せながら銀行の融資担当者に説明していきます。
資金繰り表において注意しておきたいのは、帳簿売上が黒字であっても現金が不足する場合です。
計上しているのに現金が不足ということにならないように、資金繰り表と帳簿の管理はしっかりと行っておきましょう。
【資金繰り表とは?】
資金繰り表を見ることで、一定区分や科目に基づいて、一定期間の全ての現金の収入支出を分類および集計しています。
そのような資金繰り表を示すことによって、現金収支の動きや現金過不足の実態を把握できるのです。
経営力の示すために数値管理を把握する
優れている経営者であれば、銀行の担当者にその経営力をアピールすることができます。
優れた経営者と判断されるには、数字に強く、お金の流れを正確に把握していることです。
数値や在庫、お金の管理を徹底し記録しておくようにしましょう。
数値を見ることを習慣にしていけば、経営の安定が分析できるようになり、事業の継続と発展につなげていくことができます。
その他の交渉ポイント
交渉の時に必要となる5つのチェック項目について解説してきましたが、その他にも銀行員との普段のお付き合いも大事なポイントとなるので、覚えておいてください。
銀行員とのまめな情報交換を始めとして、会社の財務資料、経営状況、さらには会社の将来性を思わせる、アピール資料を用意します。
銀行の担当者に「この会社の稟議書を作成したい」と思わせられるように、時間をかけた地道な取り組みも大切となってきます。
交渉の際に注意したい点
銀行の交渉がうまくいき、融資が受けられるのであれば嬉しいことですが、「事前に知っておけば良かった」とならないように、注意点をよく確認しておいてください。
【銀行との交渉の注意点】
☑ 信用保証付きの融資か確認
☑ 国の制度融資が受けられるか?
☑ 共通用語は事前に勉強し会計力を高める
☑ 自身の資金繰りをきちんと把握
☑ 駆け引きができないなら会計事務所に交渉する
次に、注意点についてひとつずつ詳しく解説していきます。
信用保証付きの融資か確認
融資を受ける際には、信用保証協会を通じた融資なのか、それとも別枠のプロパー融資なのかを事前に確認しておいてください。
「プロパー融資」は、プロパーローンと呼ばれる自社の資金を自社のリスク負担によって貸し出すローンのことです。
定形外の一般融資を意味することが多く、制度融資や提携ローンなどは除かれます。
『例えば、大企業・中堅企業向けの融資では、定型化された商品がなく、個別の案件毎に審査するため、通常はプロパー融資となります。
一方で、中小企業向けの「信用保証付き融資」は、銀行・信金・信組などの金融機関が融資しますが、審査が定型化されており、また信用保証協会の信用保証がついて初めて実行されるため、プロパー融資とは言えません。』
国の融資制度が受けられるのか?
プロパー融資は、信用保証協会付きの融資と同じように国の制度融資とも別枠です。
国や地方自治体が実施している融資は、民間の金融機関融資よりも良い条件が適用となります。
銀行のプロパー融資を受ける前には、低金利や借入枠が大きい国の融資制度が受けられないか確認しておくようにしましょう。
共通用語は事前に勉強して会計力を高める
銀行の担当者と対等に交渉するためには、共通言語を理解し会計力を高めておかなければなりません。
銀行員が会計に関わった専門用語を使っても、会話の流れに乗れるように専門用語を事前に勉強しておくことが大切です。
自身の資金繰りをきちんと把握
交渉を滞りなくスムーズに進めていくためには、会社の財務状況を把握しておくと同時に、訊ねられた時にすぐに答えるようにしておきましょう。
テキパキと答えられるだけの情報が頭の中にあれば、どんな質問にも回答でき、銀行員に「優秀な経営者」だと感じてもらえます。
駆け引きができないなら会計事務所に交渉する
担当者との交渉に際して、「数字が苦手」という経営者も存在しています。
もしも、自身の力で交渉の駆け引きが無理のようなら、会計事務所に依頼するのも一つの方法です。
会計事務所と話がまとまり交渉してもらえるようになったら、銀行側にもその旨を伝えておきます。
銀行の交渉が煮詰まったときには「詳細は会計事務所にお聞きください」と言うだけですみます。
銀行との交渉はコツを掴めば難しくない
銀行との交渉は、上記で解説した5つのチェック項目を事前におさえておけば、銀行との駆け引きはさほど難しいものではありません。
コツを掴みさえすれば、難しいと思っていた交渉の難易度は、どんどん下がっていき融資が受けやすくなります。
銀行での融資を検討している方は、「5つのチェック項目」と「注意したい点」を頭に入れて、次回の交渉に挑戦してみましょう。
まとめ
銀行の融資を受けるにあたって、審査の基準となる稟議書(りんぎしょ)についての説明と交渉のポイントとなる5つのチェック項目、さらには交渉時の注意点を詳しく解説してみました。
銀行の融資の決め手は決裁書とも言われていますが、銀行担当者にいかに「良い稟議書(りんぎしょ)」を書いてもらうことが重要となってきます。
「銀行との交渉が苦手」という方もいると思いますが、記事で解説してきた5つのチェック項目をおさえれば、融資の交渉がしやすくなるでしょう。
「銀行との交渉がうまくいかない」「銀行の融資が通らない」という方は、こちらの交渉術を参考にして、ぜひ銀行との交渉に臨んでみてください。