5月25日、全国で緊急事態宣言が解除となりました。 しかしながらコロナ禍が去った訳ではなく、まだまだ新型コロナウイルスが流行する前の生活に戻ることはできません。 このような新型コロナウイルスの影響下でも中小企業が持っている貴重な経営資源や技術、雇用などを次世代に引き継ぐため、また、地域のサプライチェーンを維持するため、後継者が不在の事業者に対し、事業再編や経営資源の引き継ぎを支援するのが「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」です。 この記事では令和2年度補正予算の成立を前提とした「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」について詳しくご紹介していきたいと思います。 新型コロナウイルスは事業継承にも大きく影響 2020年の国内企業の倒産件数は7年ぶりの高水準になると予想されており、新型コロナウイルスが更に経済を圧迫する可能性があると言われてます。 帝国データバンクによれば、4月の国内倒産件数は758件にものぼり、そのうち観光関連や飲食関連の企業が123件と、新型コロナウイルス関連となっています。 また、新型コロナウイルスは事業継承にも大きな影響を与えています。 債務超過もしくはその疑いのある中小企業の廃業に伴う事業譲渡 同業種の健全な中小企業の株式譲渡による子会社化や合併など 今後は上記のようなパターンの事業譲渡・合併・分割などの再編が中小企業において劇的に進むと考えられており、全国の事業引継ぎ支援センターでは60万社ほどが事業継承を行うと見込んでいます。 そこで、政府は令和2年度補正予算では経営資源引継ぎ補助金を創設。予算額は100億円となっています。 令和2年度補正予算案額の「雇用の維持と事業の継続の内訳は下記のようになっています。(単位:億円) 【資金繰り対策】 日本政策金融公庫による資金繰り支援(マル経含む)…10471 民間金融機関を通じた資金繰り支援…27,014 【事業継続に困っている中小・小規模事業者への支援】 持続化給付金…23176 中小企業生産性革命推進事業…700 地域企業再起支援事業…200 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業…100 中小企業再生支援協議会による事業再生・経営改善支援…80 中小・小規模事業者向け経営相談体制強化事業…20 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業とは? 100億円が投入される見通しの「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」とはどのような内容の事業なのか、事業目的や成果目標についてご紹介していきたい思います。 なお、「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」は令和2年度補正予算の成立を前提としているため、今後事業内容が変更となる可能性もあります。 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業の詳細が決定した際には経済産業省のホームページ等で公表となります。 事業目的 「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」は次世代へと中⼩企業が有する貴重な技術・雇用・経営資源など引き継ぎ、地域のサプライチェー ンを維持を目的として行われます。 「事業再編」や「後継者不在事業者の経営資源引継ぎ」の後押しを行い、もしも廃業を選択せざるを得ない場合でも、確実な経営資源の継承を図ります。 また、中⼩企業経営⼒強化⽀援ファンドの創設、事業引継ぎ⽀援センターにおけるプッシュ型の第三者承継支援によって、承継ニーズの掘り起こしの徹底も行います。 成果目標 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業の成果目標は下記のようになっています。 中⼩企業の技術や雇用を次世代に引き継ぐため、後継者が不在の事業者の経営資源の第三者承継や引継ぎの後押しを行う。 プッシュ型の第三者承継支援を事業引継ぎ⽀援センターにおいて実施し、事業再編によってサプライチェーンを維持する。 地域の核となる事業者の再生や第三者支援の後押しし、地域経済の維持を図るための新たなファンドの創設 成果目標の中にある「後継者不在事業者の経営資源の引き継ぎ・第三者事業承継の後押し」というのはつまり、後継者の居ない中小企業のM&Aの後押しを行うということ意味しています。 近年浸透しつつあるM&Aという選択肢ですが、今回の「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」によって日本国内の中小企業のM&Aが更に活性化していくのではないかという声も上がっています。 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業の内容 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業の具体的な事業内容は、大きく下記の3つに分けることができます。 経営資源引継ぎ補助金 「プッシュ型」の第三者承継支援 中小企業経営力強化支援ファンド 以下では、経営資源引継ぎ・事業再編支援事業の3つの事業内容を一つ一つ詳しく解説していきたいと思います。 経営資源引継ぎ補助金 経営資源引継ぎ補助金は、第三者承継を行う際の負担となる仲介手数料・企業概要書作成費用、デューデリジェンス費用(企業の資産価値評価)などの士業専門家の活用に係る費用や、経営資源の一部の引き継ぎを行う際の譲渡側の廃業費用の補助を行います。 買い手の場合、「専門家への報酬(仲介手数料等)」が200万円を上限に補助され、売り手の場合は「専門家への報酬」とさらに「既存事業の廃業費用」が650万円を上限に補助されます。なお、補助率はいずれも3分の2となります。 FA手数料や仲介手数料でM&Aを躊躇っていた中小企業にとって、この「経営資源引継ぎ補助金」は後押しとなるのではないでしょうか。 たとえば、300万円が最低報酬のM&Aと仮定した場合、「経営資源引継ぎ補助金」を活用すれば実質負担額は100万円でM&Aを行うことが可能となります。 この事業によって、今後は小規模なM&Aがよりスムーズに進んでいくることになるかもしれません。 「プッシュ型」の第三者承継支援 「プッシュ型」の第三者承継支援では、47都道府県に設置されている事業引継ぎ支援センターの体制強化を行います。 新型コロナウイルスによる影響で、相談のために事業引継ぎ支援センターに相談に訪れるのが難しい事業者や、第三者承継について興味があるという方に対して出張支援を行い、承継ニーズの掘り起こしの徹底を行います。 また、各地のサプライチェーン維持のために事業再編を促します。 … 経営資源引継ぎ・事業再編支援事業(補助金)とは?M&A関連費用も対象