
会社が事業を拡大していくために欠かすことが出来ないのが資金調達ですが、資金調達方法は大きく3つに分類することが出来ます。
- アセットファイナンス…すでにある「資産」で資金調達を行う
- デットファイナンス…「負債」によって資金調達を行う
- エクイティファイナンス…「資本」によって資金調達を行う
この記事ではその中でも「アセットファイナンス」について詳しくご紹介していきたいと思います。ファクタリングや債権回収、資産売却などがアセットファイナンスに含まれます。
それぞれの仕組みや特徴、メリットやデメリットなどについて詳しく解説していきます。
⇒デットファイナンスについて
⇒エクイティファイナンスについて
アセットファイナンスによる資金調達について
アセットファイナンスは既に持っている「資産(アセット)」を売却することで資金調達を行う方法のことです。そのため、融資(デットファイナンス)のように返済の必要がありません。
有形・無形に関わらず所有している自己資産の中で、資産価値が高いものを売却することで資金を調達するアセットファイナンスは流動性の低い資産を流動性の高い資金に置き換えることを意味しており、資本のオフバランス化に繋がるため事業運営の健全化を推進するという効果もあります。
信用度の低いベンチャー企業や中小企業の場合、銀行など金融機関による融資は受けられないことも少なくありません。そこで、自社の保有する資産に注目し、アセットファイナンスによる資金調達を行うのです。
アセットファイナンスには現在注目されている「ファクタリング」の他にも「債権回収」「資産売却」などの方法があります。
調達額 | 資金化スピード | 手数料 | |
---|---|---|---|
ファクタリング | 50~500万円 | 最短即日~2週間 | 2社間の場合かなり高額 |
債権回収 | 債権による | 取引先によるが早めの回収を目指す方が良い | 無し(債権回収会社や弁護士に依頼する場合はあり) |
資産売却 | 資産によって異なる | 資産によって異なる | 資産によって異なる |
ファクタリング
ファクタリングとは、自社が保有している売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらうことで早期に資金回収を行う資金調達方法のことです。
売掛債権は予め定められた期日にお金を受け取ることが出来る権利のことですが、期日になるまでは手元には資金が無い状態ということになります。しかし、だからと言って従業員への給与の支払いを遅らせることは出来ませんよね。
必要な時に必要な資金を用意出来なければ、売掛債権はあるのに倒産してしまうという最悪な状況に陥ってしまうことも。そんな時に利用されるのがファクタリングです。
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありそれぞれ審査基準や資金化スピードが異なります。また、手数料にも大きな違いがあり、2社間ファクタリングの場合、6〜40%と手数料が非常に高くなります。
また、3社間ファクタリングの場合、取引先にもファクタリングを行うことを知らせる必要があります。そのため資金繰りに苦しんでいる企業だと思われてしまう可能性があり、オススメ出来る資金調達法ではありません。
- 資金化スピード:最短即日~2週間ほど
- 調達額:50~500万円
- 手数料など:2社間の場合かなり手数料がかかる
債権回収
まだ回収できていない債権を回収することで資金調達を行うという方法です。いくつかの会社との取引を行っている場合、まだ未回収の債権があるかもしれません。
債権というのはいつまでも有効なわけではなく、一定期間が経過すると消滅します。そのため、未回収の債権がある場合は消滅してしまう前に回収する必要があります。債権は種類によっても時効期間は異なります。
債権の種類 | 時効 |
---|---|
約束手形債権、小切手債権 | 6ヶ月 |
運送費、飲食費、宿泊費、レンタルサービス料金 | 1年 |
授業料、給料、弁護士の債権 | 2年 |
交通事故の損害賠償金、工事代金 | 3年 |
家賃、クレジット未払金、法人からの貸金 | 5年 |
民事債権、確定判決、裁判上の和解・調停、個人間の金銭の貸し借り | 10年 |
実際に会ったり、電話やメールなどで話し合って請求することが一般的ですが、取引先がそれに応じない場合は内容証明や少額訴訟、民事調停という措置を取ることも出来ます。
自らで債権回収を行うことが難しい場合は弁護士や債権回収会社に依頼するという選択肢もありますが、費用がかかります。
- 資金化スピード:取引先による。早めの回収を目指す方が良い
- 調達額:債権による
- 手数料など:無し。弁護士や債権回収会社などに依頼する場合はかかる
⇒不良債権の買取相場は?7つの債権回収方法とかかる費用について解説
資産売却
使っていない資産を売却することで資金調達を行うのが資産売却です。使っていない資産を売却することは単に資金を得ることが出来るだけでなく、資産を維持するための維持費が軽減されるというメリットもあります。
有効活用されていない資産としては不動産や有価証券、有効活用されていない土地や建物、営業権、特許権、商品在庫など有形・無形を問わず様々なものが考えられます。
なお、売却のタイミングは資産によっても異なります。売却しても十分な利益を得られないのでは意味がありません。売却に適切なタイミングかどうかについてもしっかりと判断する必要があります。
また、不動産の場合は不動産を担保とすることで融資を受けることが出来る可能性もあります。売却だけでなく融資による資金調達についてもしっかりと検討することをオススメします。
- 資金化スピード:資産によって異なる
- 調達額:資産によって異なる
- 手数料など:資産によって異なる
⇒赤字決算の企業におすすめしたい5つの資金調達法とメリットデメリット
アセットファイナンスのメリット・デメリット
アセットファイナンスは保有している資産を売却する方法であり、返済の必要がないというのが大きな特徴です。しかしながらアセットファイナンスによる資金調達もメリットばかりというわけではなく、デメリットも存在しているということは忘れてはいけません。
ここからはアセットファイナンスのメリットとデメリットについて詳しく解説していきたいと思いますので、アセットファイナンスによる資金調達をご検討中の方は是非参考にしてみてください。
メリット
不動産や動産、売掛債権や知的財産権など、普通なら価値がつかないと思われるような資産を資金調達に利用することが可能です。また、上手くいけば経営改善にも役立てることができ、資産のオフバランス化やそれに伴う財政比率の向上なども期待出来ます。
また、資産にはリスクがあります。不動産ならば資産価値が下がってしまうというリスクがありますし、売掛債権のならば取引先が倒産して回収不能になるというリスクもあります。このようなリスクを移転させる事ができるというのもアセットファイナンスのメリットの一つです。
更に、方法にもよりますがアセットファイナンスは企業の信用力ではなく、売却する資産の価値や信用力が重視されます。そのため、自社の経営状況が悪い場合でも比較的資金調達を行いやすくなっています。
- 返済の必要がない
- 資産のオフバランス化
- 資産価値低下リスクの回避
- 資金調達を行いやすい
デメリット
多くのメリットがあるアセットファイナンスですが、デメリットも存在しています。アセットファイナンスでの資金調達を行う際にはメリットだけでなく、デメリットにもしっかりと目を向け検討を行うようにしましょう。
アセットファイナンスの中でも最近注目を集めている「ファクタリング」という資金調達方法の場合、手数料がかかります。中でも利用会社とファクタリング業者の2社間で行う2社間ファクタリングの場合、手数料は非常に高額になりがちです。
手数料は審査によって決まりますが安くても6%、高い場合では40%にもなることがあり、借り入れの金利よりも遥かに高くなります。せっかく売掛債権を売却しても二束三文となってしまう可能性があるためファクタリング利用の際にはしっかりと手数料を確認しましょう。
2社間ファクタリングは取引先にファクタリングを行うことを通知しないため、取引先に知られずに資金調達を行えるということがメリットですが、場合によっては売掛金を受け取る権利がファクタリング会社にあることを証明するための「債権譲渡登記」が必要となる場合があります。
買取金額が高額になればなるほどこの債権譲渡登記が必要となる可能性が高まりますが、債権譲渡登記を行うと誰でも債権譲渡の事実を確認することが出来るようになるため、取引先にファクタリングを行ったことが知られてしまう可能性があります。また、債権譲渡登記には数万円の費用が必要となります。
- ファクタリングの場合、手数料が高額になる場合がある
- ファクタリングの場合、取引先に資金繰りに困っている会社という印象を与えてしまう可能性がある
- 売却する価値ある資産がなければ資金調達を行えない
まとめ
アセットファイナンスは保有している資産を売却することで資金調達を行う方法であり、返済の必要はありません。また、資産売却を行うことで活用していなかった資産の維持費を軽減することが出来るなどのメリットもあります。
しかしながら方法によっては手数料が高額になること、ファクタリングを行ったことを取引先に知られることでイメージや信用度が低下してしまう可能性があることなどデメリットもあります。
また、そもそも売却する価値がある資産を持っていなければアセットファイナンスによる資金調達は行うことが出来ないため、自社の資産についてしっかり確認する必要があります。