
今や地表が舗装され、殆どの道路がアスファルトになっています。
地球温暖化の影響もあり、ゲリラ豪雨が発生しやすくなったともいわれていますが、地表が舗装され、アスファルトになったことにより、雨水が地中に染み込むスペースが昔と比べて格段に減ってしまっています。
道路などのインフラ設備が整ってきたことは、非常に便利でありがたいことではありますが、便利な半面、夏場などに突然のゲリラ豪雨に見舞われた際の浸水被害は強烈なものとなっています。
少しでも浸水被害を減らすために、各家庭に「雨水貯留タンク」を設置すれば、屋根から流れる雨水をタンクに貯めることができるため、一気に雨水が地表に流れ込むことを防ぎ、浸水被害を抑制することができると考えられています。
ですが、雨水貯留タンクを設置するには、やはりお金がかかるため、設置することをためらってしまいます。
そういった時に活用できる助成制度があり、道路に水が溢れるなどの浸水被害に悩まされる地域で、浸水被害を少しでも減らすことを目的として、国が「雨水貯留タンク」の設置に対して助成を行っています。
本記事では、「雨水貯留タンク設置助成制度」について、その申請方法や雨水タンクを選ぶ際のポイントなどを詳しく解説いたします。
INDEX
雨水貯留タンク設置助成制度についての要点を解説
「雨水貯留タンク設置助成制度」とは、ゲリラ豪雨などの被害が多い地域の浸水被害を少しでも減らすために、国が雨水貯留タンクを設置する費用の一部を助成してくれる制度です。
道路が舗装されてアスファルトになったことにより、雨水が地表に染み込みにくくなってしまい、雨水が道路に溢れてしまうような状況を未然に防ぐために、「雨水貯留タンク設置助成制度」を活用して、各家庭に雨水貯留タンクを設置してもらい、ゲリラ豪雨が発生した際に、雨水をタンクに貯め、地表に流れ込む雨水の量を減らすことを目的としています。
「雨水貯留タンク助成制度」は、各地域の自治体によって、助成制度・補助制度の名称や条件・内容は様々ですので、雨水タンク設置助成制度を活用しようとご検討されている方は、まず各地域自治体の情報を集める必要があります。
雨水貯留タンクを設置した場合の3つの効果
①浸水対策
一昔前の田畑が非常に多かった時代では、雨水は地中にしみ込んでいったため、下水道管に一気に雨水が流れ込むといったことはそれほど多くありませんでしたが、現在の地表の多くは、建物やアスファルトで覆われているため、急な大雨が降った場合には、雨水が地中にしみ込まず、雨水が下水道管へ一気に流れ込んでしまうようになってしまいました。
貯留タンクがあると、雨水が一気に地面へ流れることを抑制してくれますので、浸水被害が多い地域では、雨水貯留タンクを設置することは非常に効果的な方法といえるでしょう。
②水資源対策
貯留タンクに貯めた雨水は、樹木や草花への水やりや庭の散水などの雑用水として有効活用することができます。
貯留タンク内を常に清潔に保つことができれば、災害時の生活用水として利用することも可能です。
③暑さ対策
貯留タンクに貯まった水を利用して、夏場の暑い時期に自宅周辺へ打ち水をすることができ、暑さを軽減することができます。
雨水タンクを選ぶ際の4つのポイント
①雨水タンクに蓋がついているか
雨水タンクに蓋がついていないと、タンクの中に枯葉やゴミ、虫が入りやすくなってしまい、そこから蚊やボウフラが湧いてしまい大変ですので、蓋がある雨水タンクを選ぶようにしましょう。
②製品に水抜きドレンがついているか
蓋がついてる雨水タンクを選んだとしても、やはり掃除やメンテナンスは必要です。
できる限り雨水タンクを清潔な状態に保つためにも、雨水を完全に抜いて掃除ができる物を選ぶ必要があります。
③製品の重量
雨水タンクの重量が重すぎると、掃除やメンテナンスが大変です。
必要以上に重量がある物を選ばないことも大事なポイントだと言えます。
④助成金・補助金対象であるか
各地域自治体によって一定の容量以上であることや、予算が限られているなど条件や内容は様々ですが、助成金や補助金の受給対象であれば、賢く雨水タンクを設置導入するチャンスですので、購入前に必ずお住いの市町村区へ問い合わせてみましょう。
※助成金・補助金を申請する前に購入してしまいますと、助成金・補助金の「対象外」になりますので、注意が必要です。
雨水貯留タンク設置助成制度の対象者と具体的な助成金額
各地域により、条件や内容が異なることは上記でお伝えしましたが、本記事で雨水貯留タンク設置助成制度の対象者や具体的な助成金額を解説するにあたり、京都市、仙台市、いわき市、水戸市を例に取り上げ、詳しく解説していきます。
京都府 京都市
■助成対象者
・京都市公共下水道事業及び特定環境保全公共下水道事業の事業計画区域内の建築物に雨水貯留施設を設置される方
■助成対象となる雨水貯留タンク等
・貯留容量が80リットル以上の雨水貯留タンク等
■助成金額
・1基につき購入及び設置工事費用の4分の3の金額
(1つの建物につき設置基数の上限は4基)
・助成金額上限 37,500円
(設置工事費用の助成は上限10,000円)
宮城県 仙台市
■助成金額、タンク対象容量
・1個まで材料費相当の1/2の額
・補助上限額は10,000円
・容量80リットル以上の物が対象
・密閉型のみ
■担当部署
・業務課 排水設備係
■連絡先
・022-748-0585
福島県 いわき市
■助成金額、タンク対象容量
・購入費の2/3の額
・1基あたり限度額50,000円
■担当部署
・生活環境部 生活排水対策室 排水対策課
■連絡先
・0246-22-7519
茨城県 水戸市
■助成金額、タンク対象容量
・雨水貯留施設等の設置に要する経費(消費税を除く)の1/2の額
・補助限度額 住宅1棟につき30,000円
■担当部署
・環境課 保全係
■連絡先
・029-232-9154
※受給できる具体的な金額や助成対象となる雨水タンクの容量などは各地域により異なりますので、お住まいの地域の正確な情報を集めるようにしましょう。
雨水貯留タンク設置助成制度の申請方法5つの手順
①雨水タンク助成制度に関する情報収集を行う
各地域により条件や内容が異なるため、雨水貯留タンク設置助成制度を活用することを検討されたのであれば、まずは各地域自治体に問い合わせをしたり、インターネットで情報収集を行いましょう。
②申請書類を用意する
上下水道局のホームページから「交付申請書」をダウンロードして印刷することができます。
署名捺印を行い、交付申請書を記入して提出しましょう。
※申請する前に雨水タンクを購入してしまうと助成対象にならない場合がありますので、購入前に必ず問い合わせをして確認するようにしましょう。
③審査
申請後、審査が行われます。
※助成金・補助金制度はあらかじめ予算が決まっているため、申請をした全ての方が受給できるわけではありません。
申請を行っても審査に通らない場合があることをあらかじめ知っておきましょう。
④雨水タンクを購入・設置する
あらかじめ選んでおいた雨水タンクを購入し、設置工事を行いましょう。
※購入した際の領収書などの証拠書類は必要な書類ですので、必ず保管しておくようにしましょう。
⑤設置工事完了報告を行う
設置工事が完了したら、自治体の担当課へ工事完了報告書を提出しましょう。
※設置完了から工事完了報告書を提出する期限がありますので、設置完了から何日間の間に書類を提出する必要があるか事前に確認しておきましょう。
⑥現地確認・検査
担当者の方が現地確認を行いますので、その場に立会う必要があります。
⑦助成金交付確定通知を受け取る
助成金が支給されることが決まると、「助成金交付確定通知書」が送付されます。
必要事項を記入して、提出しましょう。
⑧助成金の受給
助成金が申請者の口座に振り込まれますので、入金を確認しましょう。
雨水貯留タンク設置助成制度の5つの注意点
①雨水貯留タンクを購入するタイミング
助成金の申請前に雨水タンクを購入してしまうと、助成対象外になってしまうことがあります。
せっかく購入したのに助成対象外になってしまう、といった事態を避けるためにも、助成金を申請することを検討した時点で、まず担当部署に問い合わせを行い、必要な情報を集めましょう。
②支給される助成金額や上限額、助成内容は各地域により異なる
上記の例でも取り上げたように、各地域によって、支給される助成金額や上限額や対象となる雨水タンクの容量などが異なります。
設置する地域の対象がどのようなものなのかを事前に調べる必要があります。
③証拠書類の保管
雨水タンクを購入した際の領収書などは、助成金を受け取るまでの手続きで必ず必要になりますので、必ず保管しておくようにしましょう。
④設置工事完了報告には期限がある
雨水貯留タンクを設置したことを担当の方に報告するのには期限が定められています。
定められた期限内にきちんと報告を行い、その後の現地確認や検査を行ってもらうようにしましょう。
⑤資金計画を立てる
実際に助成金が支給されるのは、「後払い」になります。
雨水タンクを購入するお金は、助成金が支給されるまでの間、負担することになりますので、そのことを踏まえて資金計画を立てるようにしましょう。
まとめ
「雨水貯留タンク設置助成制度」は、「雨水貯留タンク」を設置する費用の一部を国が助成金として負担することで、各家庭に「雨水貯留タンクの設置」を促し、ゲリラ豪雨などの被害が多い地域で、雨水が一気に地表に流れ込むのを防ぎ、浸水被害を抑制することを目的とした助成金制度のことです。
各地域によって助成金額や上限額、対象となる雨水タンクの容量などが異なりますので、設置することを検討したら、地域の担当部署に問い合わせを行い、自身が該当する条件を事前に確認する必要があります。
設置する雨水タンクを選ぶポイントは、メンテナンスを実施しやすいタンクか、という点です。
汚れた雨水を貯めた状態が続くと、蚊やボウフラが発生する原因となります。
雨水タンクにゴミが入りにくい「蓋」が設置されたタンクを選ぶことや、「水抜きドレン」がついていて、タンクの中の水を全て出してタンクの中をキレイに掃除できるタンクを選ぶことが重要です。
雨水貯留タンク設置助成制度の申請手順は「必要な情報を集める」→「申請書類を準備する」→「申請・審査」→「雨水タンクの購入」→「設置工事完了報告」→「現地確認・検査」→「助成金交付確定通知の受け取り」→「助成金の受給」という流れになります。
雨水タンクを設置して、「設置工事完了報告」を行うまでには期限が定められていますので、必ず定められた期限内に完了報告を行うようにしましょう。
また、申請を行う前に雨水タンクを購入してしまうと、助成対象外になることがあります。
申請を検討したら、すぐタンクを購入するのではなく、各地域の担当部署に問い合わせを行い、不明点などを相談するようにしましょう。
助成金や補助金は「目的のためにかかった経費の一部を助成・補助する」という性質上、後払いが基本です。
助成金が支給されるまでの間、かかった費用は申請者が負担することになりますので、しっかりとした資金計画を立てる必要があります。